白き髪のガーネット【改訂版】
クー兄様。
本名はクウォン。
私よりも12歳年上でこの炎の国の第三王子。
私の住んでいるこの離宮の主だ。
”クー兄様”。
そう呼んでいるけど、実は私達は本当の兄妹じゃない。
私の本当のお父さんとお母さんはもう亡くなっちゃってて、私は孤児なんだ。二人とも戦に巻き込まれて命を落とした、って聞いた。
そんな身寄りの無くなった私を引き取ってくれたのが、私のお母さんと従姉弟の関係にあったクー兄様。まるで実の妹のように可愛がってくれている。
そんな僅かな血の繋がりはある私達だけど、私とクー兄様は全然似ていない。
クー兄様が紅い夕陽のような髪と瞳なのに対し、私は白髪に灰色の瞳。
最近では異国からやってくる人達が珍しくないから、様々な髪色や瞳の色の人がいる。
けれどこの炎の国では赤系の髪色や瞳の色が多く、中でもクー兄様のような王族にとっては象徴の色だ。
ガーネット。
紅い宝石を連想させるこの名前は、正直私には不釣り合いだと思う。
……けどね。
「……ごめんなさい」
私が少ししゅんとして謝ると、クー兄様は額と額をコツンッと合わせるようにして見つめながら微笑んでくれる。
そして……。
「反省しているならいい。
ガーネットが無事なら、それでいい」
”ガーネット”。
クー兄様の優しい声でそう呼ばれると、その名前がとても美しく愛おしいものに変わるの。
「お土産の菓子がある。
部屋に戻ってお茶にしよう」
「!……ホント?わぁ~い!」
喜んではしゃぐ私を、クー兄様は高い高いをするように持ち上げながらクルクルと回してくれる。
優しくて、格好良いクー兄様。
本当の家族ではないけれど、私は幸せだった。
ずっとずっと、クー兄様のお傍に居たいと思っていた。
クー兄様の秘密。
私の白髪と灰色の瞳の秘密。
私はまだ、知らなかった。