水深
2
― ― ―*
「委員長。これ職員室まで持っていってくれ」
夕焼けで赤色に染まった教室に生徒数名と先生の声が響く。
「はい」
私は数冊ノートを抱えて職員室へと向かう。
「委員長」
と聞き覚えのある声が後ろから飛んでくる。
振り返ろうとすると
「あっ、待って。待って!そのまま振り返らないで当ててみて」
声の主に止められてしまった。
「さて、俺は誰でしょうか?」
声の主はナゾナゾの答えを聞いてくるように私に問う。
「羽崎君ですか?」
私は頭の中から答えを探し当てた。
「せーいかーい」
横からぬっと出てきたのは予想通り羽崎君だった。
(嫌でも、分かるに決まっている。
毎度、毎度昼休みにくるのだから。
それどころか話しかけてさえもくるのだから)
(人というのはおかしなもので嫌いな音や声ほど耳に残る。)
「やっぱり羽崎君でした。で、どうしたんですか?」