水深
「良ければ持とうか?」
羽崎君が私の持っているノートを指差す。
その問いに私はゆっくり首を振る。
「大丈夫だよ。これぐらい」
「そっか。なら良かった」
(この引き際が分かるところがコイツが好かれる要因でもあるのだろう)
(でも、私はそういうところも嫌いだ)
「委員長はすごいよね」
「そうかな?」
「いつも皆をまとめて」
(まとめてなんていない。ただ、なぁなぁで言いくるめてるだけ。
馬鹿な大人やクラスメイトにはそう見えてるだけ)
「委員長として当然だよ」
「皆から信頼されて」
(だってそう“見える”よう努力してるもの)
「優しくて」
(優しい奴はこんなひねくれた考えしない)