水深
「もし、良かったらこれからも話し相手とかそんな感じで委員長に絡んでいってもいいかな」
「えっ、」
ドクンと心臓が大きく鳴る ――。
いつもより鼓膜に心音が響くような気がした。
(コイツ ――)
私は女生徒のほうに目を向ける。
(人が居たら、私が断れないって知ってわざと……)
(いや、考えすぎか?でも、)
次に視線を羽崎君に移すと彼はまだ笑顔を保ったままだった。
(あの目 ――)
(分からない。でも、今はこう言うしか ……)
「…… うん、私なんかじゃ楽しめないかもだけど羽崎君さえよければいつでも話しかけてね」
その答えに満足したのか羽崎君は帰っていく。
羽崎君の足音が職員室から遠ざかっていった。
「なら、先生に交渉してくるね」
私がそう言うのと同時に一連の流れを見ていた女生徒が好奇心溢れる瞳で質問してくる。
「えっ、今のって隣のクラスの羽崎君!?もしかして委員長とそういう?」と。
(おおよそこの場合はアイツと恋仲なのかを尋ねているのだろう)
(気持ちが悪い。そんな想像しただけで反吐が出る)
「…… そういう関係じゃないですよ」
私はそう言って職員室のドアを開けた。