水深
「…… よかった」
少しだけ安堵したような声が降り注ぎ私は驚き顔を上げる。
そこにはなんとも言いがたい悲しそうにも嬉しそうにも見える羽崎の顔があった。
(相変わらず、目の底は笑ってないけど)
だけど本当にそれは一瞬で。
「じゃあ、肝心なことは分かったことだし。俺は帰るね」
「色々、ごめんね。委員長」
「あと、このことは誰にも言わないから大丈夫だよ」
すぐにいつもの雰囲気に戻った羽崎は踵を返す。
私はただ呆然とそれを見ていた。
(―― 一体、なんだったの?)
気付けば雨水が窓を叩く音は弱くなっていた。