水深
母の機嫌を損ねないようなるべく柔らかい声のトーンと明るい笑顔で言ったつもりだったが、
「…… はぁ。貴方、この前の期末の結果覚えてるの」
「こんな時間まで話す時間があるならその時間分、必死に勉強しなさいよ」
「友達と一切話すなとは言わないけど」
駄目だったようだ。
「…… うん」
「もう、いいわ。さっさと2階行って着替えてきて」
「そろそろ、晩御飯だから」
「うん、分かった。ごめんね」
私は2階に行くため階段を上りながら下っていくような感覚を覚えた。
心が、瞳が沈んで曇っていくような気がした。