水深
「嫌い、嫌い、嫌い、大嫌い!」
「うん」
「あんな時でもいつも通り笑えるあんたも」
「うん」
涙で視界が歪む。
しょっぱい味が口に広がる。
「あっさり手のひら返しする奴らも」
「うん」
汗と涙が混ざりに交ざる。
「私に仕事押しつける先生も」
「うん」
「ちょっと娘が思いどおりにいかないとすぐ怒る両親も」
声が震える。
「うん」
「それに応えようと猫被る私も」
「全部嫌い」
(あぁ、そうだ)
(私が本当に嫌いなのは――)
“私”だ。