水深
「ついでに、あんたも嫌い」
私は泣きながら何故か、羽崎に半ば抱きつく体勢になっていた。
えづく私に羽崎は言う。
「それぐらい誰かに強い感情を向けられるならもう大丈夫だよ、並木さん」
「一番、怖いのは誰にも感情、関心を持てなくなることだから」
「……俺みたいにはならない。大丈夫だよ」
ぎゅっと抱き締め返してくる羽崎の服からは柔軟剤と汗の匂いが少しする。
あぁ、なんで私が羽崎が嫌いなのかようやく分かった。
分かってしまった。
似ていたのだ。
根本が似すぎていたのだ私と羽崎は。
少し前の羽崎も自分と同じ状態だったのではないだろうか。