私の好きな彼は私の親友が好きで
昼ご飯を食べながら
”トラットリア 井上”をスマホで検索してみる。
有名な検索サイトでは殆ど情報が無かった。
住所はあるが、電話番号は「無し」の表示。
写真も数点・・
そして「要予約」
勿論、店のホームページもインスタも無し。
どうやって予約するんだ?
陽菜ちゃんはどうやって予約したんだ???
もう少し探してみると1人のブログに行きついた。
「トラットリア 井上に行ってきました。
行きたくて、行きたく仕方が無かったお店。
近所に住んでいる友達が毎日、ランチに顔を出して
予約キャンセルになった、そのチャンスに巡り合え
入店出来、食事終了後のお会計時に、次の予約取りますか?と
聴かれ、平日しか空いて居なかったけれど予約してくれました。
そう言う予約システムだったんですね~」
そんな内容だった。
なんてハードルの高い予約システム・・・
そのブログでは「トラットリア井上は、元々違う地で開店していて
その時はお客さんも余り来てくれなくて・・そのうち地元の人が
常連になってくれ、支えてくれ、だからその時に助けて
くれたお客さんが、予約出来なくなってしまわない様に、と
考えたシステムだそうです。
大抵の常連さんは、1年を通して家族の記念日に予約をしているそうです。
電話が無いのは、電話の音や話し声で、お客様の会話の妨げにならない
配慮だそうです。」
と書いてあった。
凄いお店だったんだ・・
そこへ陽菜ちゃんと省吾が合流した。
省吾が「美月、既読が付かない」
「俺のも・・」
「大丈夫だよ、美月、少し失恋の痛手で寝込んでるんだよ」
一寸、イラっとして
「失恋って誰にしたの?」
「え・・知らない・・」
「じゃあ、失恋したとか解らないじゃん」
「でも、美月が・・」
「嘘って言ったんだろ」
「まぁまぁ、亮介も落ち着いて・・陽菜も根拠の無い
話は混乱を招くだけだからね。」
陽菜ちゃんは、頬をプクっと膨らませ上目遣いで
俺と省吾を見た。
前は可愛いと思った仕草にイラっとした。
結局、この日も美月に関して、何も進展は無かった。
「打つ手なし」ベッドに横になり、天井を見つめて口にする。
俺達はスマホが無くなれば、二進も三進もいかない関係だったと
思い知らされた。
美月を家に送って行っていたら?迎えに行っていたら?
この何年間、何していたんだ俺は・・
美月の家の最寄り駅は知っているが、家は知らなかった。