私の好きな彼は私の親友が好きで
週明け、授業が始まる直前に教室に滑り込んだ。
陽菜ちゃんと一緒に居たくなかったから
教室の後ろに座って、講義終了と共に退出する予定で。
席を探していると見慣れたシャツを見つけた。
「省吾、おはよう! どうしてこの席?」
「お前が後ろに座るだろうと思ったから・・」
やっぱり、陽菜ちゃんがチョッカイを出していたと、
お見通しか。
「お前が居ないなら陽菜と2人に座るのは、面倒なことになると思って」
あ、幼馴染ちゃんか・・此処には居ないけれど省吾は気を遣っているんだ。
気を遣わないとならない相手が居て、大変なのは話を聞いて解っているが、
傍に居るだけでも、今の俺には羨ましい。
学食に行くと陽菜ちゃんに捕まりそうなので、
購買でおにぎりを買い、外で食べる事にした。
「亮介、これからどうするの?」
「うん。帰って来るのを待つよ。美月は俺の就職先も知っているし、
引っ越しもしないし、携帯の番号も何も変えない。」
「そうか・・連絡あると良いな。」
「うん。」
2人で其々に思う事に意識が集中していると、静寂を壊す
「亮介く~ん」
「2人とも此処に居たんだ~、学食探しちゃった。」
と言いながら腕に絡みついて来る。
「うん、今日は天気が良くて、省吾と話があったからね」と
言いながら、彼女の腕を自分の腕から引き剥がした。
その行動を想像していなかったのか、引きつる顔が一瞬浮かんだが、
直ぐに、何時ものニコニコした笑顔に戻っていた。
「私だけがのけ者なんて、寂しい💛」と何時もの口調で話す
が、それさえ真実では無いように感じてしまう。
「亮介君、全然返信してくれないけれどバイト忙しいの?」
「バイトは忙しくないよ。陽菜ちゃん、僕は陽菜ちゃんと
2人では2度と出掛けないよ。美月の友達だから一緒に居たけれど、
美月が居ないのに、一緒には居たいと思わないから、これからは
大学でも話しかけないで。美月に誤解されたくないから。」
「急に、何を言い出すの?」
「僕と、陽菜ちゃんとの接点は美月だから・・その美月が今、居ないなら
陽菜ちゃんと居るのは違うでしょ?それにちゃんと理由も説明したよ
美月に誤解されたくないって」
「ちょ、ちょっと 省吾からも何か言ってよ。」
「俺は亮介の友達だから、亮介の考えに沿うよ。」
「じゃあ、美月が居れば良いんでしょ!直ぐに出てくるように
言うわ。」と言ってスマホを取り出す。
やっぱり、今まで一度も美月に連絡していないのが、
この動作で確信する結果になってしまった。
「もう、どうして電源入れないのよ!」と怒っている。
「やれやれ 今更か・・」省吾の呟きに、苦笑いしか出なかった。

< 29 / 105 >

この作品をシェア

pagetop