私の好きな彼は私の親友が好きで
新たな出会い
そんな12月24日。
朝、起きると母に「美月ちゃん。今日は予定が無いでしょ?ママとお買い物
行くわよ!」
「ママ、イブだよ・・予定が無いとか決めつけないで!」(予定無いですけど)
「フ、見栄をはるのは止めなさい。」と鼻で笑う母に、言い返せない22歳女子。
半ば、強引に新宿のデパートに着き、車を預けていると、
慌てて母に駆け寄る外商さんに
「今日は娘と2人でノンビリ買い物を楽しむので大丈夫。
でも、商品は店に預けておくから、家に届けて」と話していた。
この買い物の仕方で解るように、母は生粋のお嬢様。
反対に父は苦労人。
母が20歳、父が30歳の時に出会い、母が一目惚れをしたらしい。
父は大学在学中に同級生と2人で起業し、今では何千人の社員を抱える
企業にまで一代で築いたが、当時は未だそこまででは無く、
母との恋を進めるのに、躊躇していたが母の両親、すなわち私達の祖父母は、
反対しなかったと聞いた。
父は自分で「絶対に泣かせない、今の生活が出来るように精進します。」と
祖父母の前で自らの意思で誓い、それを忠実に守っている。
ただ、子供が出来た時に「娘が(私が)同じ生活水準の相手と、恋に堕ちるとは
限らないから、普通の生活も併せて送らせたい」と話し合った結果
私は回転寿司も、ファストフードも、何度も利用している。
洋服だって普段は、有名なファストファッションのお店で揃えている。
ハイブリットに育てられた、私と弟。
開店間際のデパートは、人もまばらで、のんびりショッピングが出来ると
思っていたが、母はストレスが溜まっていたのだろうか、凄い勢いで
お店をまわり始めた。
先ず、母が私に着せたいブランドNO.1のショップ。
ここは凄く上品なデザイン且つフェミニンでもあり、
私も気に入っているブランドではあるけれど、
大学生が買えるお値段では無い・・
母も私も気に入った、黒のマットストレッチダブルクロスのワンピース。
フレアとギャザーがたっぷり施されたボリューミーなAラインのシルエット
が華やかでいて、とても清楚だった。
それと合うカシミヤの一枚仕立てのベージュのコートも、
母は手に取っていた。
そして、「クリスマスにダウンコートって女性らしくないわ。」
心の中で(ママ、このダウンコートはイギリスに行く前に、寒いからと
ママが選んだハイブランドのダウンだよ・・)
そんな風に言われ、イギリスの寒さから守ってくれた
ダウンコートが不憫に思えた・・
「美月ちゃん、そのワンピースに着替えてね。
ママも今から選ぶから・・・」
結局、ママと同じ試着室で着替える羽目に・・・
もうすぐ50歳になるとは思えない、鏡に一緒に映る我が母の美魔女ぶりに
感心したのと、陽菜もこんな風に可愛らしく年齢を重ねるのかと一瞬、
頭によぎり、久々に苦しくなった。
「ママ、凄く綺麗。私もママに似たかった・・」
「美月ちゃん、何言っているの!ママは美月ちゃんのお顔に
産まれたかったわ。」と・・気を遣ったのか店員さんも
「私も、お嬢様の様な、お顔立ちが良かったです。」と言わせてしまった。
次に靴売り場に向かい、ここでも母は
「今日は車で移動なんだから女性らしくヒールの靴を履きましょう。」
と言い、赤い靴底で有名なハイヒールを自分と私の分を購入し、
「美月ちゃん、良い靴はヒールでも長時間歩けるのよ」と言って
85mmのヒールを履かされた。
私のヒールは少し太かったが、母は同じ高さでピンヒールを選び、
女子力の違いを感じ、軽く凹んだのは母には内緒だ。
今日は履かないがブーツも其々購入した。
そこで母は私にだけバックも購入した。
お店を出る時にはもう、車を預けた時の私は何処にも居なかった。