私の好きな彼は私の親友が好きで
買い物はほぼ終わりか、と思っていたら母はそのまま
ランジェリーショップに足を踏み入れる。
そこで、下着のセットを2人合わせて10セットも購入し、ワンセットだけ
持ち帰る事を話している母をボーと眺めていた。
(母よ!そんなにストレスが溜まっているのか?)と心配になる。
そして、これを支払う父にも同情した。
下着を選びながら母は私に言い聞かせるように
「女は何歳になっても下着に手を抜いてはダメよ。
抜いた瞬間に、パートナーから女と思われなくなるから。」と
口にした。母の口から性的な意味合いが少しでも含む話が
出たのに驚き、母は何も言わないが、私の事を色々見ているのだと
感じて、赤くなった。
「ママ、そろそろお茶にしない?」
「いいえ、まだよ。 これから上のサロンに行って
ヘアーもセットしてもらいましょう」と言い
又、2人並んでヘアーメイクして貰う。
「美月ちゃん、楽しいわね。娘がいて良かったわ♡」と
言われ恥ずかしかったけれど
「私も、ママの娘で良かったよ。」とぶっきら棒に口にした。
本当は可愛く口にしたいのに・・親にまで可愛げのない私。
サロンで、全身を映し出された鏡に映った自分を見た時に、
幼い頃に夢見た童話のお姫様になったような気がした。
サロンを出てエスカレーターでフロアーを移動する。
母が次にどうしたいのか全く解らないが、クリスマスイブに
お姫様に変身出来た事が嬉しく、深く考えていなかった。
おっとりと、箱入り娘の母が、とんでもない事を計画している
なんて想像もしていなかった。
「あ、可愛い」と思わず目に入ったニットワンピース見て口にする。
「あら、美月ちゃんに似合いそうね・・そうだわ 部屋着が無かったわ」
「うん?」
「なんでも無いの。 着てみましょう。」
「もう、買い過ぎだよ。 パパに怒られる。」
「なに言っているの、褒められる事はあっても怒られる事は無いわ。」
(買い物して褒められる訳ないから・・母よ)
もう、そのワンピースを手に取り、「着てね」と
乙女な笑顔で言われると、断る術を持っていない・・
そこのデザインはリボンを甘辛で使っていて、とても可愛い。
そのワンピースもシンプルなデザインだけれど、横のスリットが
ガッツリ割れていた。
首の後ろでリボンを結ぶが、背中も思いの外、開いていた。
ベージュと、黒があり母は両方購入し、ベージュだけ、ここでも手渡された。
「ママ、もう13時もまわっているからランチにしよう」
「あら、大変。急がないと・・」
(流石ママ、予約してあるのね・・美味しい物食べれるかな????)
そんな呑気なことを考えていた。
車に乗り、窓の外の風景が日本橋に変わっても、何も警戒していなかった。