私の好きな彼は私の親友が好きで

(時間はタップリあるの言葉に嫌な予感しかしない・・)
薫さんを盗み見た。私を見てニヤッと笑ったのは多分、私の予感通りだからだ。

「ママ? 時間がタップリあるって 何時に家に帰るの?」
「もう、何言っているの~ イブに、この部屋にいて、帰るって言う選択肢が、
ある訳ないでしょう? ね~百合ちゃん! 今日は呑んで、呑んでも
誰にも邪魔されないし、何もしなくて良いのよ! そんな天国のここを
チェックアウトして私に家に帰って、家事しろって言うの?」
(ママ、家事 していないよね。 パパのお出向はするけど・・
背広、預かるだけだよね・・鞄も重たいって言って持ったことないよね。)
そう、口にしようと思って止めた。
多分、口にしたら殺される・・
気が付けば母はシャンパンを呑んでいる・・もう、運転する気なかったって事か・・
隣の男性はスパークリングウォーターを口にしている。
「薫さんは呑まないのですか?」
「付き合いでは呑むけれど、基本は呑まないかな・・
美月ちゃんは?」
「私も、お付き合い程度です。」
意外だった 凄く飲みそうな雰囲気があったから。
その時、先程の会話を思い出し、思い込みはいけないと
「薫さん、お酒強そうですけど。」
「うん。強いよ! 多分 酔わない。」
「だったら 何か呑まれますか?」
「有難う。でも、大事な時にはアルコールは口にしない事に
している。」
「大事な時?」
「そう、今日は大事な日でしょ?」
その言葉に私は真っ赤になった。
こんな私とのお見合いを大事な日と思ってくれたことに。
その、素直な言葉に私も自然と
「そう、思ってくれて嬉しいです」と口にする事が出来る。

母たちが、そんな様子を見てニヤニヤしていたのは気が付かなかった。
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