私の好きな彼は私の親友が好きで

食事が終わり、呑み続けている2人をダイニングルームに残し、
私達はリビングルームに席を移動し、コーヒーを飲むことにした。
ふと、気が付く・・ここ、ベッドルームが何部屋あるのだろう?
その疑問が又、顔に出ていたのか
「部屋、探検した?」と聴かれブンブンと首を振る
「折角だから全部見て回ろう。」

最初に開けた扉はキングサイズのベッドの部屋、続いて外が見えるバスルーム、
書斎、シングルのベッドが2台の部屋、檜のお風呂・・
「今までで泊まった、どのホテルよりゴージャス!」とキラキラした
眼で口走っていた。
「俺も・・贅沢だな・・」
その時、私は勝手に母と私でキングサイズのベッド、
ツインルームに薫さん親子だと思い込んでいた。
2人で部屋を見るのは、思いの外、楽しかった。
部屋だと思い開けたら、トイレだった時は顔を見合わせて笑い転げてしまい、
無駄に広いクローゼットも可笑しかった。
リビングに戻って来てソファーに座る時には敬語は無くなり、
すっかり打ち解けていた。
「さっきの続きだけれどね」と薫さんが切り出した時には
何の話か解らなかった。
「高遠社長は君が結婚をするまで、お見合い話を永遠に持って来る。」
「・・・」
それは、娘の私が1番解る。父はきっとそうするだろう。
それに私は抗う事は多分出来ない。
「だからね。もし、美月ちゃんが俺を生理的に受け付けないので
なければ俺との結婚を考えてくれないかな。」
「け け 結婚~ それは、いくら何でも 話が飛び過ぎでは無いですか?」
「そうかな? だって、高遠社長は美月ちゃんがOK出すまで、毎週
今日みたいな席を設けると思うよ。今日みたいにホテルのスイートルームって
言うのは無いと思うけどね。今回は母親同士が仲良しだからね。
もうしかしたら、日曜日 午前の部、午後の部と2回のお見合いもあるかもね。」
(え~~~~~~)
強ち、否定できない・・・
「だから、そんなの時間の無駄でしょ?疲れるし・・
で、どう?嫌じゃなかったらこのまま俺と結婚するって。」
「そんなに簡単に決めて良いのか・・私、未だ学生だし・・」
「学生だって事を解ってても、高遠社長は進めているからね~」
(確かに・・)
「いくら何でも・・せめて社会に1度は出たい・・」
「働きたいの?」
「大学出て直ぐに家庭に入るって・・世界が狭すぎて」
「じゃあ、うちの会社で働く?」
「え~・・」
「俺の秘書とか・・そうしたら一緒に居られるし」
「ちょ ちょっと 待ってください。薫さんの秘書になったら
もし、結婚しなかったら気まずくなります・・」
「あれ、これだけ話しているのに、浮気して未だお見合い続けるつもりなの?」
「う う 浮気って人聞きの悪い!」
「毎週、こんなお見合いするの美月ちゃん出来る?」
「ムリです・・」
「俺の事、見るのもイヤ?おじさんだから無理?」
「いえ! 薫さんは素敵です!」
「フッ ありがとう。」
その笑顔も素敵です。ってそうじゃない。
こんな素敵な人に恋人が居ないわけが無い・・・
「薫さんほど素敵なら何も私じゃなくても、選び放題じゃないですか?」
「おじさんだもん モテないよ。」
「それは嘘ですね。」
「ま、確かに昔はモテていたけれど、父の会社に入ってからは
トンとご無沙汰だね~」
「お付き合いしている人とか、気になっている人とか・・」
「社内で手を出すのは問題だし、取引先の女性も別れた時に面倒だからね。
そう、考えだすと出会いがね・・仕事も覚えないとで忙してく
気が付けば・・もう、清廉潔白な生き方よ!
出家しているのと同じような生活だよ」
「清廉潔白、自分で口にしちゃうんですね。」
「誤解されがちな容姿しているからね。」
「あ、それも自分で言っちゃうんですね。」
「さっきも言ったけれど、口にしないと伝わらない。
特に俺達は知り合ったばかりだからね。”~だろう”が1番危険なんだよ。
君の不安や心配は、取り除きたいと思っている」
なんだろう 熱烈な愛情表現を口にされているのでは無いのに
ドキっとする。
「で、どう?」
「なにがですか?」
「はぁ~」と薫さんから盛大な溜息。
「確かに美月ちゃんよりおじさんだよ、でも、見た目も悪くないだろ?
仕事もちゃんとある、離婚歴も無い、優良物件だと思うよ。」
「それはもう、私には勿体ないくらいで・・」
「じゃあ、このまま結婚しよう!」
「だから いきなり飛び過ぎです!」
「そんな事ないよ。 結局、高遠社長は美月ちゃんが結婚するまでは
続けるよ。」
「お付き合いして・・」
「付き合っているっと言ってお見合い話を無くして、ハイ OKとならないのは
解るよね。」
う~~~~ それで逃げ切れる父じゃない・・
「美月ちゃんの、今、置かれている状況は、結婚しないと駄目って事だよ・」
多分、そうであろう。だけど・・
「子供っぽいのは解っていますが、私は好きな人と結婚したい・・」
後ろの方は段々声が小さくなってしまったが。
好きな人・・どの口が言うんだ・・付き合う事も出来なかったくせに・・
俯いて薫さんの顔も見れない。
夢みたいな恋愛を、結婚をしたかった。
「お見合いだと好きになれないの?
お見合いだって、合コンだって出会いのキッカケでしょ?
そこから、恋愛になるかは俺達次第じゃない?」
「キッカケ?? そうか 出会いのキッカケだと思えば・・」
「で、俺はそのチャンスを貰える?」
私は薫さんはジーと見た。
整った顔立ち、笑うと目じりに寄る皺、大きな手、
多分、鍛えているのであろうガッシリとした胸板。
そして何よりも真っ黒で、意思の強そうな瞳に惹かれていた。
「私みたいにガキで良いんですか?
恋愛偏差値も低いし、我儘で独占欲が強いですよ。多分
女の人と話す姿見ても妬きますよ。」
「恋愛偏差値っていう表現するのか・・今の娘は・・」
「じゃあ、なんて言うんですか?」
「経験不足・・」
「いやらしい~~~~」
「少しずつ知り合って行こう ね」
「はい」
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