私の好きな彼は私の親友が好きで

小一時間ほど散歩し部屋に戻ると、
母達は寝室で仮眠を取っていた・・
ツインルームで・・・
すぐに 薫さんを見た。
薫さんは普通だった。

大人に取っては、大した事が無い出来事なのか、
平然とリビングに向かい、窓際に立ち、私を手招きする。
「うわぁ~ 綺麗・・・上から見るのも又、違う美しさがあるますね。
お部屋だから寒くないし。」
「そんなに喜ぶなら来年も、この部屋、取ろうかな。」
「待ってください。それは贅沢です。」
「大丈夫だよ。それくらいは稼いでいるから」
「そういう問題じゃなくて。私、未だ22歳です、贅沢過ぎます!」
「確かに、この部屋予約したのがバレたら、来年も保護者同伴になりそうだ。」
(ありえる)
そう、思いそーっとツインルームを振り返る。
同じ事を薫さんもしていて、又2人で笑った。
この人と居ると楽しい。
そう、私はとっても楽しんでいた。でも、楽しければ楽しいほど
自分自身が正直でないのが、余計心苦しかった。

どの位 2人でそこで観ていたのだろう・・
「なんだか銀婚式を迎えた夫婦が、縁側でお茶飲んでいるみたいね。」の
声で、2人で黙っていただけなのに、居心地が良い事に気が付く。
後ろを振り返ると、母達がニヤニヤしている・・
悪い事をしていた訳ではないのに、耳まで赤くなっているであろう自覚に
余計動揺するが、薫さんは平然と
「酔っ払いが、なにを言っているんですか。」と軽くいなしている。
はぁ~ 心でため息が出る。 大人だ。
「貴方達、夕食はどうする?」
「美月ちゃんと僕は2人で食べて来ますよ。
どうせ、2人ともルームサービスですよね?」
「息子よ! よくぞお分かりで。もう、飲み物しか入らないわ~」
「と言うわけだから、美月ちゃん何食べたい?」
「お昼が重たかったから、和食が良いです。」
「じゃあ、大丈夫だとは思うけれど、イブだし時間も時間だから
席が空いているか確認するね。」
何処までも、そつない人。
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