私の好きな彼は私の親友が好きで

お風呂から出て、リビングに戻ると、ソファーの背もたれに腕をあげ、
その手に頬杖をついて、窓を見据え、何かを考えているような瞳に
私の動きが止まる。
この人は何を考え、私と結婚しようとしているのだろう?
気配を感じたのだろうか、薫さんがこっちを見た時には
優しい、穏やかな瞳に変わっていた。が、私の事を一瞬、
二度見したような、気がするが
「2人は、もう、寝室に行ったよ。」と穏やかに口にする。
凄く凄く 嫌な予感がする。
聴くべきか、それとも・・悩んでいると

「美月ちゃん、その格好・・・」
「あ、薫さん気が付いてくれましたか?
ウサギさんです。 フードには耳が有って、ほら、尻尾もあるんですよ。」

とクルリと回り、尻尾を薫さんに見せた。

「美月ちゃん、やっぱり 美穂さんの娘さんなんだね。」
「いくら似てなくても、勿論、実子ですよ!」
「いや、そうじゃなくて・・君達、母娘は似ているよ。」
「余り、言われた事は無いですよ。私は母の様に可愛く
生まれたかったです。」
「人それぞれ、求めている女性像は、違うんじゃないかな?
俺は美月ちゃんが良いよ。」

サラっと口にされたその言葉に、どう反応して良いのか解らず、
言葉を探していると

「美月ちゃん、やっぱり似合ってる!」と陽気な声が・・
「ママ、有難う。手に入れられたんだね。」
「ママからのクリスマスプレゼント。
 あ、解っていると思うけれど、百合ちゃんとママは
あっちの部屋で寝るから、美月ちゃんは薫さんと寝てね。」
「ママ~ な な なんで 嫁入り前の娘を男性とって・・」
「いやね~ 婚約者じゃない。」
「婚約者って 今日 会ったばかりだよ。」
「ママはパパに一目惚れヨ♡そんなの時間じゃないのよ。
あ、でも薫君、扉は開けて寝てね。」
「勿論です。」
「じゃ、おやすみ ママたちはもう少し飲むから。」
茫然と見送る。

「美月ちゃん、口が空いてるよ」とクククと笑いながら薫さんが
私の頭を触る。
「だって、嫁入り前ですよ!」
同じワードしか口から出ない・・語彙が少なすぎる。
「俺の所に嫁に来るんだから、良いんじゃないの?」
「かおるさ~ん」
泣きそうな声で呼ぶが・・この人はこの状況を楽しんでいる。
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