私の好きな彼は私の親友が好きで

「さ、俺もお風呂入ってこようかな。」
「いってらっしゃい。」
早く一人になって頭を整理したかった。
そりゃ、処女じゃない。
だからって、亮介以外を知らない。
経験豊富かと言ったら微妙だ。
はい。そうですかと言って、男性と一緒に寝れるほど
図太い神経も、持ってない。
どうしたら良いの?
ベッドに先に入って寝たふりをする?
それとも、薫さんが寝るまでリビングにいて
寝た頃に行く?
どれが正解なのか解らない。
悩んでいるうちに、薫さんがバスロープを羽織って出てきてしまった。
少しだけ濡れて、さっきまで綺麗にオールバックに流していた
前髪が、無造作に額に掛かっている様も美しく、ドキっとしてしまう。

これが大人の色気というものなのだろうか?

「俺の顔になにかついてる?」
「いえ、綺麗な顔だな~と思って、見惚れてしまいました。」
「つぅ・・それ、無意識に口にしているの?」
意味が解らなくて首を傾けると
「本当に、困る・・」
困るに・・動揺してしまい、少し目が空を彷徨う・・
「ち 違う、美月ちゃんが今思った、困るじゃないよ。
言動が、いちいち可愛くて、俺が困るってこと」
その言葉に、私が悪かったのではない、事だけは理解できた。
「取り合えず、もう遅いし、ベッドに行こう」

平然とベッドに誘う薫さんに、恥ずかしがっている自分が滑稽だった。
こんな大人からしたら、私は魅力的では無いのだと1人納得した。
この人の隣は、大人の女性が似合う。
”可愛い”と私に言う位だから、妹のような感じなのだろう。
お互いの家庭条件が相まって、婚姻がベストだから、
いわば契約の様な結婚なのかもしれない。
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