私の好きな彼は私の親友が好きで
「薫さん、なんで裸なんですか?」
「さぁ? 何時も寝る時はパンツしか履かないからかな?
寝ぼけて脱いだのかな?」
絶対嘘だ!
だってバスローブはちゃんと椅子に掛かっている。
「嘘つき」
「ククク。変な所、感が鋭いね」
薫さんの匂いが鼻孔をくすぐる。
心地良い。
薫さんも私の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込むのが解る。
「いい匂い。ズーとこうして居られる。」
(私も)そんな事、言えないけれど。
「美月ちゃん、俺とこうしているの不快?」
「いえ、心地良いです。」
あー この人は、私が言えない言葉を、容易く引き出してくれる。
「じゃあ、ずーと 一緒にいよう。」
それは今の事ですか?未来のことですか?
「返事は?」
「あの~ 朝ご飯食べないで ですか?」
「フフ そうだね。日本語は難しいね。今も、この先もって事ですよ。
取り合えず、もう一度 俺のウサギさんを抱きしめさせて」
そう言って彼は私を抱きしめる・・・
あ、腿に当たるのは・・
その、戸惑いに気が付いたのか
「フッ それは半分、生理現象。」
「残りの半分は?」
「それを、今 口にするのは地獄だよ。扉の向こうに多分、耳を2つ
くっ付けて、動向をハラハラ見守る人達に、聴かせたくないから、
残りは2人きりの時にね。」
なんでもお見通しなのですね。
「こうやって抱きしめていると、不思議と昔から抱きしめている
みたいだ。」
「本当に。」
「あ、ちゃんと自分の口で言えた。偉いね」
と、頭をポンポンされる。
嬉しい。
この腕の中に居たら、私は傷つかないで済むのだろうか?
誰とも張り合わないで良いのだろうか?
陽菜の陰に怯えないで済むのだろうか?
「美月ちゃん、後で連絡先を交換しよう。明日は仕事に行くけれど
終わらせたら、連絡する。一緒にデパートにベッド見に行こう。
その後、食事して送って高遠社長に、ご挨拶する。」
「ベッドですか?」
「そう、初デートがベッド選びはイヤ?」
「いえ、大丈夫だけど・・お仕事は大丈夫ですか?」
「大丈夫!逆にやる気が起きるから。朝も、寝る前も電話する。
お見合いだって、夫婦になってからだって、恋愛したって良いじゃない。
恋人同士の様に過ごして、ただ同じ家に帰る、名字が同じだけ。
其れだけだよ 違いは。」
この人は、私が懸念している事をチャンと覚えていてくれて
向き合おうとしてくれている。
私も向き合わないと。
「はい。宜しくお願いします。」
「美月ちゃん、俺 単純に今、凄く嬉しい。
でも、 多分ドアの向こうでヤキモキしている人達が居るから、
仕方が無いけど、起きて朝ご飯たべようか!」
「ですね!」
薫さんは、私に回している腕に少し,キュッと力を込めた。
私は少しほんの少し 息を大きく吸って薫さんの匂いを味わった。
のは 内緒だ。