私の好きな彼は私の親友が好きで

イギリスに行く前、亮介が陽菜に向けていた優しい眼差しを、
飲み会の後に、亮介の所に戻って、気にしていたのは、
陽菜にバレていないかだった事を。
私を抱いた直ぐ後に、陽菜からのメッセージに綻ぶ顔、
私を抱いた後に「陽菜に告れば。」私の言葉に
「お前がいるから・・」って期待していたのに・・
そんな言葉も無かった事を
あの時の、張り裂ける胸の苦しみを。
最後にバスルームで泣きながら抱かれたことを。
全て忘れていた。忘れようとしていた。

会わないうちに忘れて、都合よく脳内変換していた。

どの位そこに居たのだろう。
ふと、バックから振動が・・慌てて取り出すとそこには
今朝、連絡先を交換した(薫さん)の文字が・・

「もしもし」
「美月ちゃん、今 どこ?」少し慌てた声。
「あ、あの 昨日のイルミネーションの・・・」
「すぐ行くから、絶対に動かないで。」
「でも  」
「でも、は聞かないよ。 そこに居て」
通話を切ってから気が付く大量の着信履歴に
大量のメッセージ。
殆どが母と薫さん。

既に家を出てから、4時間以上がたっていた。
(皆に迷惑掛けちゃった・・)

薫さんに言われたから、そこに居たのでは無い。
会いたかったんだ。

狡い私は、違う人に助けを求めている。
卑怯な私は、誰かに君が大事だと言って欲しいんだ。
人の心を利用して、つけこんで・・卑怯な人間なんだ。
だから、それを見抜いているから亮介は、純粋な陽菜を選んだのに。
亮介と身体を重ねながら、亮介の身体を知っている私を選ぶと
何処かで自惚れていたから・・・

だから神様は、クリスマスの今日、私に現実を見せるという罰を与えた。
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