私の好きな彼は私の親友が好きで

薫さんに半ば強引にお風呂場に連れられ。
さっき、コンシェルジュの人から渡された紙袋を置きながら
「この中の物で、事足りると思うよ。」

お湯がタップリはられ、白濁とした入浴剤が
入った湯船に身体を沈めた。
手足を伸ばしても余るバスタブに、縮こまって凭れる。

無意識に、そのままバスタブに沿って背中をズルズル 
滑らせて後頭部から、湯船に沈む。
このまま 私自身がお湯に融けて無くなってしまえば良いのに。
融けて無くなってしまいたかった。
そう思っているのに、息が苦しくなり足掻く。
死ぬ勇気も無い自分に情けなく、苦しく、又足掻く。

ここで、寝れば死ねるのだろうか?
死ねばこの苦しさから抜けられるのだろうか?
そんな事を何回か繰り返していると、器官にお湯が入り、
ゴォフォ,ゴォフォ!と噎せ返る。
又、それが情けなくて涙が溢れる。
「誰か 助けて!」小さな声で何度も、何度も口にする。

どの位、入っていたのだろう・・・
「美月ちゃん、」と遠慮がちに声が聴こえた。
「あ、はい。」
「大丈夫?」
「はい。ごめんなさい。直ぐに出ます。」
「いや、良いんだ。寝ちゃったのかと思って。」
きっと、心配して様子を見に来てくれたのだ。

紙袋に入っていたシャンプーとコンディショナーを使い、
ボディーソープは浴室にあったのを使わせてもらう。
抱きしめられた事を思い出し、胸がキュンとした。

紙袋の中には下着と、化粧水、昨日、私が母からプレゼントされた,
お気に入りのブランドのルームウェアが入っていた。
何時の間に・・

(慣れているのかな・・・)

さっきまで亮介の事で涙していたのに、チクっと胸に痛みを感じる。
「最低だ・・嫉妬出来る立場じゃないのに」
< 54 / 105 >

この作品をシェア

pagetop