私の好きな彼は私の親友が好きで
薫さんが帰宅し、鞄だけを置いて2人で地下駐車場へ。
当たり前の様に高級車の助手席に座り、当たり前の様に
シートベルトを彼が装着する。
「シートベルトくらい出来ます!」
「甘やかしたいだけ、自己満足だから」
そう言って綺麗な笑顔を向けられると、反論なんてしたくなくなり、
恥ずかしくて俯く。
先日、母と訪れたデパートの駐車場に車を停める。
当たり前の様に手を差し出され、オズオズと手を添える。
母と回ったのと同じデパートなのに、景色が違う風に映る。
一番に家具売り場に向かうのかと思ったら、エスカレーターで
ノンビリ、上を目指す。
4階の婦人服売り場でおもむろにフロアーに降り立ち、
何の迷いも無く歩き始め、迷いなくショップに入る。
そこは私がホテルで着用していたニットワンピースを購入した店。
「薫さん?」
「この間、それと昨日着ていたワンピース、凄く似合っていた。」
「有難うございます。嬉しい」
そう会話しながら、彼はスカート、ブラウス、ニット、ワンピース
パンツ。と何点かラックから取り、店員さんに渡す。
「美月ちゃん、試着してきて。」
有無を言わさない口調に素直に従う・・
(着替えるのは良いけれど、薫さんに見せるべきだよね)
(恥ずかしい・・でも、ここでグタグタしていたら、本来の
目的まで行きつかない。)
意を決して試着室を出ると、店員さんと談笑している薫さんに
ズキっと胸が痛む。
「お待たせしました。どうでしょうか?」
眼を細め、私を見た薫さんは、私の手を取り、上にあげて、
ダンスをするようにクルリと回転させた。
フワ~とワンピースの裾が優雅に翻る。
「良いね~。じゃあ、次ね」
と、優しい顔で口にしながら、手に持つ商品を手渡される。
そんな調子で次から次へと試着し、
全てが終わり、試着室から出て来た時には
薫さんの選んだ商品は、全てお会計が済んでいた。
「薫さん!ダメです。私のなんだから 私が・・」
「フッ 奥さんの洋服を、夫が買うのは当たり前ですよ。」
その言葉に店長さんが慌てて、
「お嬢様、ご結婚おめでとうございます。」と言われ、
スタッフもそれに続き、
「未だです」とは言えない雰囲気になってしまった。
店を出てから薫さんに
「未だ、結婚していないのに誤解されちゃいました。」と言うと
「じゃあ、直ぐに本当にしちゃおう!」
と冗談とも本気ともとれる言葉に、更に慌てる。
「さぁ、次行くよ。」
次も又、私の・・・薫さん、下着売り場は恥ずかしくないのだろうか?
顔色一つ変えずに、商品を次から次へと選ぶ。
しかも、私のサイズ。
この人は・・と少し睨むと・・
「男だからね。触れば解るよ。」と耳元と言われ、又赤くなる私。
心臓が持たない・・
「薫さん、私触られた記憶ないんですけど」
「そう? 多分、君は寝ちゃうと中々起きないからね・・」
「もう!エッチ!」
「男だからね~」
楽しい。そう思うのは悪い事だろうか?
ここも、薫さんが支払いを済ませる。
さっきの洋服もそうだけれど、ここの下着の量も多い。
「こんなに買わなくても、家にも新しい買ったばかりがあるし」
「美月ちゃん、今日も明日も明後日も、もう君を帰すつもりないよ。」
「へ?」
キョトンとして薫さんを見上げる。
「美月ちゃん、その顔は反則。」
「?????」
「無自覚か・・・たち悪いわ~」
「薫さん。いくらなんでも・・」
「28日まで仕事だから29日に、君と一緒に高遠家に
挨拶に行くよ。」
「でも、」
「前も言ったけれど、でもは利かないよ。
夜、一人で寝かしたら君は一人で泣くからね・・
それは絶対にさせない。笑う時も、怒る時も、泣く時も
全部、俺の傍でして。」
「か おる さ ん」
この人はどうして、こんなにも優しさに溢れているのだろう。
「取り合えず、今日はここまでで、ベッドを見に行こう!」
「今のベッドではダメなの?」
「今のは一人用だからね・・・・美月ちゃんに、あんな事や
こんな事が出来ないからね~」とニヤリと笑う。
「エッチです・・」
「そうだよ。男はエッチなの。」