私の好きな彼は私の親友が好きで

家具売り場でベッドを見るが、2人で納得するのが見つからない・・

「今の時代。デパートで、なんでも揃えるのは時代錯誤か・・」
「あのベッドは何処で?」
「通販」
「え?」
「確かー5万もしなかった。」
「えーーーーーー薫さんてもっと、こう 家具とかにうるさいかと・・」
「全然。だって本当に寝に帰って来るだけの部屋だもん。今までは。
でも、これからは違う。だから・・」
真直ぐな言い方に心が喜ぶ
「・・・なんだろう。薫さん 私 凄く嬉しいです。」

その言葉に、薫さんが左手を口に当てた、気のせいか少し耳が赤くなっている
ようにも見えた。

「2,3日 あのベッドでも良い?」
「良いですよ。そこまで私、寝相は悪くないと思うので」
「俺が、抱きしめて寝ているのに、落ちるわけがないだろう。」
「感謝しています」
そう言って又、2人で笑う。

「じゃあ、ベッドは29日にジックリ探そう!そうと決まれば、
ちょっと ドラックストアに行って、美月ちゃんの
シャンプーとリンスを買おうか。ボトルの方か使いやすいもんね。
あ、1Fで化粧品を見た方が良いんじゃない?」
「薫さん、私、大学生だからコスメもドラックストアです。」
「じゃあ、すぐそこのに行こう。」

繋いだ手の温もりに少し緊張し、戸惑い、でも離したくない手。

亮介とは友達だった。それを私が一方的に好意を持ち、
キスし、SEXをしたのは、多分、絶対に亮介には少なからずとも
お酒の勢いがあった。
私はそれを利用したんだ・・・
だから、その関係が崩れる事は無かった。
SEXする時だけ・・それ以外の私達は友人のままだった。
その先に性がなければ、手を繋いで出掛ける事も、洋服を買う事も無かった。

街中を2人で歩く時も友人だった。

振り払われるのが怖くて、
信号待ちで止まった時に、大学から亮介の部屋に行く時に、少し離れて歩く
その、空いている手に何度、自分の手を伸ばしかけて、
躊躇って行き場の無くした手が数え切れないほど、空を彷徨った。

その時を思い出し、苦しくなる胸の痛みを隠すように
「薫さん、食料品を買って帰りたいです。」
「うん?」
「流石に3食を外食とかデリバリーだと、味に飽きるというか・・
上手じゃないですが作っても良いですか?」
「作れるの?嬉しいな。じゃあ、ドラックストアの後に
食器売り場に戻って、お茶碗とか食器を少し買い足そう。」
「お鍋とかありますか?」
「調理器具は一応、揃えたみたいだけれど、食器はグラスと、
マグカップ、お皿が何枚しか無いよ。」
「凄い!アンバランスな揃え方ですね。調理器具が揃っていて・・
食器が無いって 中々 無いですよ。」
「母が揃えたからね。でも、途中で気が付いて止めたんだと思うよ。
俺が料理をする事は無いってね」
(母の友達ならあり得そう・・)
そう思って忍び笑いをすると、パチっと目が合う。
「何が可笑しいの?」
「母と似ているな~と思って」
「やっぱり類は友を呼ぶなのかね。」
クククと2人で笑う。

神様、笑っても良いですか?
この人に頼っても許されますか?
心で問うた。
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