私の好きな彼は私の親友が好きで

家具屋さんに向かう車中で、疑問を口にする
「薫さん、父と知り合いだったのですか?」
「どうして?」
「会社同士の繋がりとかのレベルの親しさでは無いように感じて」
「相変わらず君の洞察力は凄いね」
「10年以上も前から可愛がって貰ってるよ。
高遠社長が居なかった今の自分は居ない」
「そうなんですね。だから父に怒鳴られなくてすんだんだ」
「怒鳴られると思っていたの?」
「はい。外泊がここまで続いたら流石・・」
「もしかして、何も根回ししていないと思ってた。」
「母には連絡してくれているのは解っていたのですが・・」
「嫁に欲しいと思っているのに、父親をないがしろにしたら
手に入れられないでしょう?直ぐに連絡しているよ。」
「やっぱり大人ですね。」
「大人じゃないよ。手に入れたくて余裕が無いんだよ」
その言葉にキュンと胸が高鳴る。
「嬉しいです」それしか言えない。もっと上手く表現出来たら・・

初めてのちゃんとしたデート?それが2人で寝るベッドを探すなんて
可笑しすぎる。
「何が可笑しいの?」
「だって、いくらお見合いでも、初めてのデートがこの間でも、
今日でも、2人で寝るベッドを探すなんて・・普通じゃないですよね」
「そうだね。キスもしていないのに一緒に寝ている僕らは怠惰だね~」
「もう、薫さんの口はエッチです。」
「俺の口がエッチなんて知らないくせに」
その言葉の意図に思わず赤くなる。
彼は耳元で
「知りたい?」と囁いた息に子宮がキュンとした。
この人とキスしたい・・そう思った時には
首を縦に振っていた。
「ここがお店じゃなかったら君を押し倒していたよ。
お願いだから、そんな顔を外ではしないで。」
彼はそう言って握った手に力を込めて早歩きをし始めた。
「今日、しないといけない事を、さっさと片付けてしまうよ」
その普通のトーンに少し傷つく自分がいる。
私の落ち込みに気が付いたのだろうか
「早く2人きりになれるようにね。」と付け足す彼は
ヤッパリ大人だ。
急いでとは言ったけれど、お気に入りのベッドに出会うのにも
時間がかかった。でも、気に入ったベッドが同じベッドだったのは
嬉しかった。
「同じ感性なんだね。」の言葉に嬉しさが増す。
同じブランドでベッドサイドテーブルを2つ。
そして、念願のあのマットレスも購入した。
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