私の好きな彼は私の親友が好きで
午前中に届いたベッドを改めて見ると、ダブルからキングにサイズか変わったし、
ベッドサイドテーブルも設置したので、部屋全体が薫さんの寝室から、
2人の寝室にと雰囲気が変わった。
それが、密かに嬉しい。
ベッドを設置して貰っている間に、キッチンの棚で背が届かない場所の
調理器具を確認すると、本当に何でも揃っていた。
土鍋やすき焼き用の鉄鍋まであった。
「薫さん、今夜、お鍋にしませんか?」
「良いね~」
「今日はお鍋にして、お正月にすき焼きをしましょう!
だって、このお鍋見ていたら、すき焼きが食べたくなってしまいました。」
「フッ、美月ちゃんは食べる物の話しをする時、嬉しそうで俺も幸せになる」
そう、あんなに忘れがちな食事だったのに、薫さんと、
何を一緒に食べようか?と考えるのが楽しくて仕方が無い。
2人でスーパーで食料品を買うのも楽しかった。
「お鍋は何味?」一つを取っても、「一緒!」と口を揃える事もあれば、
「知らない!」となる事もあり、お互いに発見するばかり。
何時までも、一緒にこうして買い物したい。
「薫さん、明日も、明後日も、私と一緒に買い物して下さいね」と
言葉が漏れてしまった。
薫さんは、眼を細め、一瞬難しい顔をしたかと思ったら直ぐに破顔する。
「俺も同じ事を考えていたよ!」
嬉しくて泣きそうになる。
幸せでも涙って出るんだ。
その夜、新しいベッドに入るのに凄く緊張した。
心の何処かで今日、私は・・・
そう、思っていた。
だって、ベッドは新しい、キスをしてから甘い雰囲気が
2人の周りを支配している。
薫さんは私にするボディータッチも、増えて、そのタッチの仕方は
私の肌を粟立てる触り方だった。
なのに・・彼は何時もの様に私をバックハグし、昨夜の様に少し
扇情的な手の触り方以外は、何も変化が無かった。
私が、ドキドキして眠れないのを他所に、彼は暫くすると
規則正しい寝息を立てていた。
(はぁ~バカみたい・・お気に入りの下着を付けたのに・・)
自分一人が盛り上がってしまい、悶々として、久々に眠れなかった。
暗い部屋で深夜、幾らバックハグされていても、心に不安が溢れる。
『どうして、薫さんは私を抱きしめるだけなのだろう❓』
『どうして、私と結婚したいと思ったのだろう❓』
『お父さんの体調が良くなって貰いたいから❓』
『10歳も離れているから妹みたいな家族愛❓』
『私をスキ、も愛しているも言われてない!』
当たり前だ、こうやって寝ているけれど、未だお見合いして1週間も
経っていないのに、私を好きとかある訳無いか・・・
私は、薫さんに惹かれているのに・・・私ばかりの想いが膨らんで
狡い・・
次から次へとマイナスな思考が私を追いかけて、真夜中に引きずり込もうと
していた。
私が眠りに就いたのは、かなり遅くになってからだった。