私の好きな彼は私の親友が好きで
トクン。心臓が跳ねる。
薫さんが駐車場に入れたのは、私達の出会ったホテル。
どうして今日ここへ?
「美月、食後の散歩をしよう・・」
「はい。」
どうして、今日 ここなんだろう?
「美月、緊張しているの?」
繋いだ手から緊張感が伝わったのだろうか・・
「少し・・」
「フッ 俺も」って聞こえたような気がした・・
薫さんがフイに立ち止まり、空を見上げる。
私も、同じように見上げる。
「星が綺麗ですね。」
「寒くて空気が澄んでいるから、綺麗に見えるね。
特に今日の月は満月で綺麗だ。」
「今日は満月だったんですね。」
2人で月を愛でる・・
その時、薫さんが胸のポケットから小さな箱を取り出し、
私に向けて開ける。
「美月、私と結婚してください。」
小さな箱から見ええるのはセンターストーンの大きなダイヤ、シャンクに沿って
並ぶラウンドダイヤはプラチナを感じさせないカットダウン・セッティング。
このブランドの代表するデザインだ・・・
「薫さん・・」
お見合いだから、家同士の結婚だから、恋愛感情が無いから
プロポーズしてくれるなんて、考えて居なかった。
嬉しくて、嬉しくて 涙が頬を伝う。
「はい。ハイ。します! 私を薫さんのお嫁さんにして下さい!」
矢継ぎ早に、前のめりに、返事をしていた。
そんな私を薫さんは笑い飛ばすのでは無くて
「はぁ~ 良かった。 」と安堵のため息を漏らした。
そして、直ぐに私はパフっと薫さんの胸に顔を埋めるように抱きしめられた
「美月、好きだよ・・」
私の1番聞きたかった言葉が、薫さんから紡がれた。
私の涙腺が崩壊して
「ふぇ~」と泣き出した。
そんな私を抱きしめながら又「美月、好き」と言ってくれる。
「薫さん、薫さん。私も薫さんが好きです!」
そう、言ったつもりだけれど、後でベッドで聞いたら
「かふぉるさん、かふぉるさん、 わらひも かふぉるさんが
ズギ ぢゅでゅずでず」と
聴こえたらしい・・
満月の夜に、クリスマスの日に、ボロボロだった私を見つけてくれた場所で、
私にプロポーズしてくれた薫さんの想いが嬉しかった。