私の好きな彼は私の親友が好きで


プロポーズされた翌日に、2人で、婚姻届けを出しに区役所を訪れた。
昨夜、プロポーズの後に自宅に帰ると、鞄から封筒を出し、
その中身をテーブルに広げ、
「後は、美月が記入するだけだから」

それは婚姻届けだった。
証人の所には両家の父が既に、記名してあった。

「何時の間に?」
「結構前・・」
「指輪も?」
「うん。指輪は去年のうちにオーダーにだしていた・・引く?」
「そんなこと、無い・・嬉しい。よく指のサイズ解りましたね?」
「僕のウサギさんは、一度寝ちゃうと中々起きないからね」
あ、前にも同じ事言われた・・・そう思いクスっと笑う。
そう言いながら彼は私のルームウェアーのフードを被せ、
「ウサギさん、可愛い~ 食べさせて」そう言われ、
私は、薫さんと云う、獰猛な旦那様に優しく、激しく、
身体中を食べられた。

婚姻届けは、あっけなく受理されて
「おめでとうございます。」と言われた。
その、素っ気ない言葉すら嬉しかった。

晴れて、私は飯島美月になった。

薫さんは、区役所からそのまま会社に向かった。
私は、スマホを取り出し、彩に連絡して
一緒にランチの約束を取り付けた。

彩と一緒に向かった店は”トラットリア 井上”
あの日、亮介と陽菜が来た店・・
私は久しぶりの訪問だった。突然の予約だったのに
快くリザーブしてくれた。

突然の予約だったにも拘わらず、景色が良く、一寸 内緒話が出来る
何時もの席に案内された。
彩は何となく私の表情を注視している。
この2年ほど、私は彩に心配させてばかりだったから・・

「25日に亮介の部屋に向かったら陽菜に会ったの・・
2人、上手くいっているみたいだった・・」その話に
一瞬、彩の顔が険しくなったので、慌てて。
「彩、そこ、今は気にしないで・・実はその前日にお見合いしたの。」
「美月がお見合い???」
「うん。」
「それで?」
「結婚した!」

彩が、口をあんぐり開けて金魚みたいにパクパクさせていた、普段クールな
彩の顔が珍しくて思わず、スマホでパチリと写真を撮った。
その、音で、彩は覚醒状態から戻ってきた。

「ちょっと、今の写真、捨てて!」
「イヤよ~ こんな、間抜けな顔した彩、初めて見た。」
「そりゃあ、間抜け面になるわよ。親友が結婚したなんて聞いたら」
「ゴメンね。驚かしちゃったよね。」
「ちょっと、時系列が解らない。」
「うん。24日に母に騙されて、お見合いしたの。相手は母の親友の息子さん、
で、その日4人で、ホテルのスイートルームにお泊りしたの・・」
「4人でお泊り?スイートルームで、お見合いお泊り・・金持ちの考える事は
解らん!」
「いや、金持ちだからじゃないよ・・母だからだよ・・母のお友達も母と
同じような人だった・・今は私のお義母さんだけど」
「美月のママが2人・・それは、それで怖い・・」
「フフフ だよね。 で、私、その人、薫さんて言うんだけれど、薫さんと
一緒のベッドで寝かされたの。」
「え~~~待って、待って。会ったその日に?」
「うん。」
「ママ達がいたのに?」
「ママ達がそうしろって・・」
「恐るべし美月ママ」
「で、一緒に寝て安心したの・・それと、ピッタリフィットしたみたいな・・
パズルのピースがハマったような? 何とも言えない感覚が・・それは薫さんも
一緒だったみたいで・・」
「ふ~ん」

そこで、前菜が出てきて暫し、食事に意識が向く・・
「久々に食べると美味しいね。」
「うん、美味しい。美月も久しぶりなの?」
「最後はイギリスに行く少し前・・」
「そっか・・・」
「今度、薫さんと来たいな~」
何となく口にしてしまい、ハッとする・・そんな私に親友は
優しく笑ってくれた。
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