私の好きな彼は私の親友が好きで

食後、コーヒーとデザートを食べながら続ける。
「その日にプロポーズ?じゃないんだけれど、このお見合いは
父がイギリスに、私を戻さない為に画策したらしく、私が結婚するまで
お見合いは続くと・・多分、父ならそうするのも解るし・・
で、薫さんが結局、私が結婚するまで毎週、こんなお見合いが続くんだよ。
自分と居て、嫌じゃなかったら結婚しよう!みたいになっちゃって・・
そこからはトントンと話が拡がり、私は飯島美月になって父の会社で
就職することまで決まったの・・」
「え! 展開はや!」
「でもね、私 心の何処かで亮介を忘れられなかった・・
待っていてくれるって信じてた。
もし、今 彼に会って自分の想いを打ち明けたら・・
もし、亮介も同じ気持ちだった・・そうだったら・・
薫さんとのお見合い話を破談にしても許されると思ったの・・・
そんな風に他人を利用したから、神様はちゃんと私に罰を与えた・・
亮介の家に25日、帰って来てから行ったの・・
でも、勇気が出なくて、駅前のコンビニに入って・・
そうしたら陽菜に声かけられて・・亮介のこと呼び捨てだったし、
しかもカゴには亮介の好きなミルクティーと避妊具が入っていたの・・
陽菜の家、全然違うし・・で、大学に用事があってと私、咄嗟に
嘘付いたら『同じ方向だから一緒に行こう!』って言われた・・
亮介の家に行く途中の陽菜に会うなんて・・罰が当たったんだよ。」

「美月・・」彩は言いたい言葉をグッと我慢した。
(確証は無い・・私が見た訳では無い・・親友は違う人生を歩み始めた)

「それで、気が付いたら、お見合いしたホテルの庭で、薫さんと一緒に見た
イルミネーションを眺めていたの、そうしたら何時間も家を出てる私を心配して
薫さんと母から、着信が沢山あってね。そのスマホを見ていたら又
薫さんから着信で・・こんなボロボロの私を迎えに来てくれて・・
違う男性で傷ついている、最低な私を何も聞かないで、包み込んだくれた」
「辛かったね」
彩が涙を堪えているのが、震える唇をキュッと噛み締める仕草で解る・・

「その日、薫さんのマンションに連れて行ってくれて・・
そこから実家に帰っていない・・」
「え! 拉致?」
「フフフ そんな物騒な・・薫さんが私を家に帰さなかったのは、
家に帰ったら夜、寝る時に1人で泣くからって・・」
「うん、うん、薫さん、美月を家に帰さなくて正解だよ。
薫さんが美月の傍に居てくれて良かったよ。」
「で、段々、惹かれるって言うか・・好きになったと言うか・・」
「うん、良かった。良かった」

彩は泣きながら笑ってくれた。

「おめでとう。おめでとう」と何回も言ってくれた・・
親友に『おめでとう』って言って貰えるって幸せなんだ。
こんなに嬉しいんだ・・
「彩、こんな私の結婚を軽蔑しないで祝ってくれて有難う」
「美月のバカ!私達は親友なんだよ。何時だって、どんな時だって
味方だよ。」
「彩、彩、有難う。私も彩が親友で嬉しい。私も何時までも彩の
味方で居る!」
「じゃあ、亮介君のことはもう・・」
今朝、寝室のゴミ箱に避妊具の空き箱が捨てられているのが
目に入る、奇しくも、それは陽菜がコンビニで買おうとしていたのと
同じパッケージ。
それに気が付いた時、悲しみじゃない感情に行きついた。
大好きな人に抱かれている私は、凄く幸せだ、陽菜を好きだった亮介も
いま、陽菜と抱き合えているのは幸せなんだ。
好きだった人の幸せを喜んであげないといけない・・そう思えたのは
自分が幸せだから・・
傲慢な考えかもしれない、でも自分が幸せだから、大好きだった人の幸せを
願える・・亮介も幸せなんだね。

一方的だった想いを、漸く手放す事が出来た気がした。

だから
「うん!もう大丈夫。いつか笑って、良かったねって言えるかも」
そう言いながら、少し涙が零れたのは仕方が無い・・

多分、私達の雰囲気や会話に気が付いていたのだろう。

シェフの井上さんが、ケーキに「Happy Wedding」と書いた
ケーキを追加で持って来てくれた。
こっそり「おめでとうございます。今度 ご主人と一緒に来てください」
やっぱり、嬉しい。些細な事が幸せ。
何時までも、この幸せが続きますように・・

お腹一杯だった筈だけれど、デザートは別腹の女子あるあるで、
美味しく頂いた。
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