私の好きな彼は私の親友が好きで
その遣り取り、記憶にある・・父の会社に学校の帰りに寄った、
その日、弟が体調が悪くてママが病院に連れて行く事になっていて
ピアノのお稽古に送って貰えないから、父の会社で時間を調整する事に、
父が居ると思ったのに、格好いい人が居て、緊張を隠す為に、そんな会話を
した。あの時の人が薫さん?
「浦島太郎が薫さんだったの?」
「そう、俺。美月の手料理の予約を誰よりも1番にした筈。」
「じゃあ、八木沼さんが話していた『付き合ってはいないけれど、
彼女が1番だから、浮気はしていないけれど心まで支配しようとしないで』
の彼女って・・」
「そう、美月のこと」
「だって、あれ 私が小学生のとき・・」
「お願い、それ言わないで・・俺、真剣に悩んだんだから・・
小学生相手にキュンとした自分が信じられなくて・・
中学生になった美月を見て、恋焦がれた事に反発する様に
同年代と付き合った・・ちゃんと欲情するか確認するために・・
八木沼さんも多分、その中の一人・・・」
「私が薫さんにとって1番ですか?」
「1番ですね~~10年も前から・・・」
「私、薫さんの1番じゃないって・・傷ついて・・
こんなに薫さんが好きなのに、何時かその人が現れたら、私離婚されちゃう
と思うと悲しくて、苦しくて、顔を見れなくなっちゃって・・
毎朝、用事も無いのに早く家を出て、公園でボーっとしていました。」
「美月は自分にヤキモチ妬いていたんだね・・美月、約束して。
これから先、色々な人が何を言っても、俺の事は俺に聞いて!
他人の言葉で勝手に傷つかないで。勝手に離れていかないで・・
美月が居なくなったら俺、生きていけない。」
「薫さん、私も薫さんが居なかったら生きていけません。
だから、誰かを好きでも傍に居たい・・薫さんに捨てられるまで・・
そう、思っていました。」
「美月、それ辛い・・ちゃんと俺に聞いて、俺が愛しているって言ったら
絶対なんだよ・・誰が何を言おうが、俺が愛しているんだ!」
「私を愛しているの?」
「愛していない人と結婚なんて出来るわけないでしょ。」
「私も、薫さんを愛してます。」
「初めて言われた・・・」
「私も初めて言われました・・」
「俺、何回も寝ている美月に言ってるよ・・」
「そんなの狡い!意識無い時はノーカンです。」
「ノーカン?」
「ノーカウントの事です!」
薫さんを見てクスっと笑ったと同時に私の眼が涙が溢れて
止まらなくなってしまった。
「どうして?今まで涙出なかったのに・・安心したら急に・・」
「うん。辛かったね。苦しかったね・・俺も美月を失うと思うと
怖かった・・・」
「一緒ですね」
彼は優しく私の涙に口をつける。
ペロっと舐める・・いつの間にか薫さんの膝の上に座ってされるがままを
心地よく、楽しんでる。
私は、心にわだかまっているのを口にする
「八木沼さんのお友達が、薫さんに連絡をするように勧めていました」
「へぇ~」
「話すの嫌です・・」
「大丈夫だよ。俺が飯島コーポレーションに入社と同時に
スマホの番号を替えたから。だから掛かって来る事は無いよ。」
「そうだったんですね。」
「誤解しないでね。俺が飯島コーポレーションの後継者だと知らないで、
契約してくれた会社を大切にしたかったんだ。俺達のソフトを信じてくれた
顧客をね。多分、俺が飯島の跡継ぎだと知ったら、飯島との取引をしたいから
ソフトを導入しようとするだろう?それがイヤだったんだ。
飯島コーポレーションの俺じゃなくて、飯島薫を 大事にしてくれた人とだけ
繋がっていようと思った。」
「解ります。私も 私を見て貰いたかった事がありましたから。」
「八木沼さん、薫さんを薫さんと呼んでいました。」
「うん・・」困った顔をする・・
「その人が薫さんを私と同じように呼ぶのが凄くイヤです。」
「彼女に会って、俺を飯島さんと呼んでと話すよりも、美月が
俺を 薫って呼べば良いんじゃないの?」
「・・・・」
「呼んでごらん・・」
「か かおる・・」
「うん、良く出来ました。もう一度呼んで」
「かおる」
「俺を呼び捨てにするのは、両親と学生時代の親友、それと美月だけだ
だから、そんな事でヤキモチ妬くな。でも、美月が気になった事は
言いなさい。2人で解決しよう。夫婦なんだから・・」
「夫婦?」
「そう、一生の恋人で夫婦だ。」
「私が薫の1番・・・」
彼が私の左手の薬指を触りながら
「月曜日から、この指輪が右手にあった・・怖くて聴けなかった・・
もう、左手にはしたくないって言われたくなくて・・だから
さっき、会社で左手に嵌めなおしてくれた時凄く嬉しかった。
首の皮1枚で繋がったって・・」
「ゴメンなさい。指輪・・他意は無かったです。
月曜日にショックで帰宅したけれど、何をしたかも記憶に無くて・・
火曜日も、水曜日も・・ズーとただ、機械的に出社していました。
だから、指輪まで意識がまわりませんでした。迂闊でした。
傷つけてすみませんでした。」
「良いんだよ。今週は忙しくて、美月ともっと早くに話していれば
美月がこんなに痩せる事もなかった。」
そう言いながら私の首にキスを落とす・・
「か 薫もお疲れ様でした。」そう言って目の下の隈にキスを返す。
「喧嘩しても、ベッドの真ん中で寝て。そしてハグさせて・・
俺、全然 疲れ取れなかった・・美月をハグして寝ないと・・
充電出来ない・・こんなポンコツ嫌い?」
「私も、全然眠れませんでした・・今朝、薫の脚が私の脚に絡まっているのが
嬉しかった。」
「エッチなウサギちゃんだ!」
「あわぁぁ・・どうして そんな事になるんですか・・」
「だって、脚が絡まって欲情したんでしょ?」
「・・・・うぅん・・」
薫が挑発したのに私の答えに真っ赤になり、そっぽを向く耳は真っ赤になっている。
「薫、可愛い・・」失言だった・・気が付いた時には お姫様抱っこで
ベッドにパフゥンと優しく、性急に沈められていた。ニヤリと獰猛な笑みを浮かべ・・
「土、日が休みで良かったな・・みつき・・」