婚約破棄されたけど隣国の王子様と飛空艇で世界旅行してる私は超勝ち組!?
「あ」


一階の社交場は巨大な水槽のようにライトアップされていて、目を引く。

四角い仕切りガラスで区切られた席がいくつも並び、透明感のある蒼白い照明が床や壁を走っている。その一角にひとり静かに物思いに耽っている人物がいた。


「船長」


今夜ばかりは飛空艇を森に預けて寛いでいる。

一座ではない純粋な整備士たちが、こうして町に出ている間はきちんと守っているのだそうだ。だから一座の巡業はそのまま、船長の休暇という事らしい。

せっかくの休みを邪魔しちゃいけない。
そう思ったのに、向こうが私を見つけてしまった。


「……はい」


微笑んで、手招きしてるから。行くしかない。
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