婚約破棄されたけど隣国の王子様と飛空艇で世界旅行してる私は超勝ち組!?
「旅先での飲み食いも醍醐味のひとつだ。口にクリームがついてる」

「あ……」


指先で拭き取る。
ファイサル船長はくつくつと笑った。普段よりずっと寛いだ雰囲気だ。


「それは混ぜて飲むんだと思う」

「そ、そうですね……っ。そうしてみます」


なに緊張してるんだろう。
ファイサル船長はシュッとした細いグラスで、深い青色のカクテルを嗜んでいる。見ているだけで目の保養だ。突飛な言動がない分、他の人にはない安心感がある。


「聞いたよ」

「え?」

「水竜の化身になったって?」

「ああ……」


昼間の、飛び込み台の事だ。
あの時間、ファイサル船長は部屋で休んでいたから、プールにはいなかった。


「泳ぐのも上手いなんて、君は狡いな」

「いえ。そういうわけでは」

「なにか心配事?」

「……」


そちらこそ、核心の突き方が、お狡い。
< 104 / 174 >

この作品をシェア

pagetop