婚約破棄されたけど隣国の王子様と飛空艇で世界旅行してる私は超勝ち組!?
と、そのとき。
すいーっとこちらに泳いできた王子が、すぐ傍で深く潜った。
絶対にひっぱって悪戯するつもりだ。

そうはさせるか!

私は足をばたつかせて、王子の手を避けた。

ひょい。
ひょいひょい。


「ふふん♪ マーメイドちゃんを舐めるな……ッ」


舐めていたのは、私のほうだった。
王子に足ではなく手を掴まれて水中に潜らされた私は、遠くにホスニーの飛び込む音を聞いた。


「……」


王子め。
髪を掴んでやろうと伸ばした手も、すいっと絡めとられる。

こう、指を。
なんというか、一本ずつ交差する形で?


「……っ」


唇にキスされた。


「グゴポ……ッ」

「……」


驚いて、泡を吐き出した私に、王子はいつもと違う笑みを残して、離れていった。
< 98 / 174 >

この作品をシェア

pagetop