片翼を君にあげる①

「《ーーツバサ?大丈夫?」

「!っ、……」

「《ごめんねっ?ボクが困らせる事言っちゃった?》」

俺の顔を覗き込んだジャナフが心配そうに尋ねてくる。どうやら考え込んでいる内に難しい表情(かお)をしてしまっていたようだ。
俺は慌てて首を横に振ると、今度はこちらからジャナフに質問する。

「《大丈夫、気にしないで。
ところで、ジャナフのところはどんな兄弟?》」

「《ボクのところ?
ボクのところはすごいよ〜!ぜ〜んぶ男の兄弟!》」

「《兄弟全然が男?それはすごいね》」

俺の言葉にジャナフは笑顔で「でしょ?」と頷くと隣に座り、指を折りながら兄弟の事を話し始めた。

「《1番上の兄貴はね〜頭も良くて、強くて、イケメンで、文武共に非の打ち所がない男!
2番目の兄貴は、冷静沈着で頭脳明晰でさ。3番目の兄貴は、国で1番強いって言われてる武術の達人!》」

弾むような言葉で紡がれる彼の兄弟の紹介。
しかし。自慢の兄達の話題を楽しそうに語った後、ジャナフはハァ〜ッと溜め息を吐いて空に手を伸ばしながら見上げる。

「《3人とも、ほんっとにすごいんだぁ〜。親父からも、周りからも期待されててさ〜》」

「《……ジャナフ?》」

何だか、突然雰囲気が変わったーー?

さっきまで明るかったジャナフの表情と声が、突然寂しそうに感じた。
どうしたのか?と、横顔を見つめていると、顔を俺の方に向けた彼がポツリと呟く。

「《……。ボクだけ、何にもないんだよね》」

「……」

「《勉強も、運動もイマイチだし。これと言った特技もなくてさ……》」

「……」

「《親父は優しくしてくれるけど、ボクだけ母親が違うってのもあって兄貴達とはなんか〜……距離感じるんだよね》」

「……」

そんなジャナフの言葉に、俺はなんて返したらいいのか分からなかった。
元々この手の話や相談が苦手なのもあったけど、それだけじゃなくて……。本当に、分からなかったんだ。
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