片翼を君にあげる①
「っ……なん、で……だよ、……ッ」
「ツバサ……っ」
「なんでっ……帰って来て、ッ……帰って来て、くれないんだよーー……ッ!!」
あの日言えなかった1番の想いが、溢れた。
生きていてほしかった。
帰って来てほしかった。
また頭を撫でてもらって、馬鹿みたいに戯れ合って、笑い合って……。たくさんたくさん、色んな話をしたかったんだ。
父さん。
貴方は俺の憧れで、目標で、母さんの笑顔を取り合うライバルで、そして……。
「っ……だい、すき……なんだッ」
「……うん、っ」
「俺っ……父さんが、ッ……大好きで……っ」
「うん……っ」
「会い、たいッ……」
「っ、……うん」
「っ……会いたい!ッ……会いたいよーー……っ!!」
カッコ良く、新しい旅立ちの決意を母さんに伝える筈だったのに……。15歳の時言えなかった事が、全部全部溢れ出した日だった。
泣き虫だった幼い頃に戻ったように泣きじゃくる俺を、母さんは抱き締めながら、ぽんぽんって背中を優しく叩いてくれた。
それがすごく心地よくて、久々に泣いたら想像以上に体力を消耗したみたいで……。俺は、知らない間にそのまま眠りに落ちてしまった。
そしてその間、眼帯を外したままにしていた左瞳の能力で、俺は母さんの記憶と想いを知る事になる。
……
…………。