片翼を君にあげる①
夢の配達人ーー。
それは、俺達の世界にある職業の一つ。
Jack of all trades、いわゆる何でも屋。
その中で特別に選ばれた人物の組織。
依頼人の目的や願いを叶える事から、”夢の配達人”。そう名付けられていた。
夢の配達人の手にかかれば、どんなに困難な事も解決したり、欲しかった物が手に入ったり、願いが叶ったりする。
だが。そんな夢を叶えてもらえるのは選ばれた人物のみで、勿論、無料ではない。
仕事が困難だったり、長期にわたる仕事だと多額の報酬が必要で、金持ちにしか雇えない存在。
大金を積んで仕事を依頼しても、引き受けてもらえるか分からない上に順番待ちが殺到中。
一般庶民にとってはその存在自体が夢だった。
更にその夢の配達人の中には順位があり、各自が持つバッジの素材で分けられている。
S→プラチナ(白金)
A→ゴールド(金)
B→シルバー(銀)
C→ブロンズ(青銅)
俺の父親はかつて、この中で最高位のSランク。白金バッジを持ち、その地位を最年少の16歳で取得してから19年もの間守り続けた、未だ破られていない記録を持つ伝説の夢の配達人と呼ばれる人物だった。
……そして。
俺自身も15歳まで、Aランクの金バッジを持つ夢の配達人だった。けど……。