片翼を君にあげる①
「お前さぁ、途中で仕事ほったらかしたハンパもんのクセにいい気になってんじゃねぇぞ?」
「わざわざそんなレベルも高くない地元の学校に来て、凡人のオレ達に能力の差見せつけて、そんなに優越感に浸りたいのかよ?」
「せっかく声掛けてやったのにその諭すような口調、何か上からの目線でムカつくわ〜。
やっぱ夢の配達人って金の亡者なんだな?」
三人は笑いながら、俺に言った。
ほら、こうなるから嫌だった。
だから、クラスメイトの誰とも絡みたくなかったし、目立ちたくなかった。
そうだよ。
理由はどうであれ、俺は夢の配達人の仕事を途中で投げ出して、最高責任者や依頼人、たくさんの人達の期待や夢を裏切った。
『っ……お願い、ツバサ!
危険な事はもうしないでッ……遠くに行かないでっ?
あなたにまで何かあったら、私はもうっ……生きていけないッ!』
大事な大事なあの日。
白金バッジに昇格する為の試験に、俺は行かなかった。
行ける訳、ないじゃん。
俺を引き止める母さんに掴まれた衝撃で外れた眼帯。封印が解けた左目が、"お前が行けば、母親の命が消える"……そう、告げた。
他にもっといい選択肢があったのかも知れない。
けど、夢の配達人だって所詮はただの人間。
自分の夢or母親の命ーー。
急に天秤に掛けられて、どうしたら最善の道だったのか?なんて、当時15歳の俺には考えられなかった。