片翼を君にあげる①
『なるほど。ツバサ、君の出す条件は面白い。サリウス王子に直接お会いした事はありませんが、噂で聞く限り君の話にほぼ100%乗ってくる事でしょう。
……ですから、大事なのは最後の決め手です。相手がOKと即答出来るような美味しい餌を、君には用意出来ますか?』
その時、俺は最高責任者にこう答えた。
俺の人生を、サリウス様に捧げるーー。
つまり、無償で、期間なく、死ぬまで夢の配達人として……。いや、奴隷のような扱いでも文句言わずに一生サリウスの願いを叶え続ける。と言う事だ。
順番待ちが当たり前で、更に順位の高い程依頼金が多額の夢の配達人。
それを無償で、順番待ちもなく自由に使えるとなれば、普通は喜んで飛び付くだろう。
が、問題が二つある。
一つ目は、
相手がドルゴアという大国の第一王子である事。
二つ目は、
サリウス様にとって俺は、何の実績もない銀バッジの夢の配達人である事。
夢の配達人の中でも上位で名も知られている白金バッジのミライさん程の人物ならばまだしも、有能な部下が多く、また裕福な国の第一王子である彼にとって、俺は決め手になるだけの価値があるかどうか……。
夢の配達人に復帰してからこの五日間で、なんとか1番格下の青銅バッジから銀バッジに上がる事は出来たが、出来れば1番順位が下でもいいから金バッジにはなっておきたかった。
……でも、今はそんな事を悔やんでいても仕方ない。
自分が今出来る事がこれ以上ないのなら、この今を受け入れて挑むしかない。
後俺が出来る事は、なるべく堂々と自信を持って話す事。
覚悟を決めた俺は、最後の難題に挑む為口を開く。
「こちらがサリウス様に捧げるもの、それは……」
「ーー夢の配達人を自由に手足として使える権利、と言うのは如何ですか?」
ーーえっ、?
まさかの声に、耳を疑う。
俺の言葉を遮って、ここに居る筈のない人物の声がした。
その声に俺はもちろん、この場に居た全員が声がした扉の方を向く。すると、「失礼致します」と言う声の後にゆっくりと扉が開いて……。姿を現したのは、最高責任者とノゾミさん。