片翼を君にあげる①
「先輩達が協力してくれた礼は私にではなく、会えた時にでも直接お伝えしなさい」
「っ、……はい」
「先輩達も期待してるんですよ。君が、白金バッジの夢の配達人になる未来に……。
ヴァロンが魅せた夢の続きが、また見られる事をね」
最高責任者の言葉を聞くうちに複雑な気持ちはいつの間にか消えていく。そして俺の胸にはトクンットクンッと、嬉しい気持ちが広がっていった。
「その事に関してはヴァロンに。そして、親の七光りである自分にしっかりと感謝しなさい」
「……はいっ」
「親のコネでも、七光りでも、いいじゃないですか。それは変えられない事実で、けど同時に君の力でもあるんです。
存分に使って、どんどんのし上がりなさい」
「はいっ」
「そしていつか、ヴァロンにも、誰にも負けない、唯一無二の夢の配達人になりなさい」
「はいっ!!」
唯一無二の、夢の配達人ーー。
まだまだ遠い未来だけど、決して辿り着けない未来ではない。俺が歩みを止めなければ、いつか、きっと……。
けれど、その前に。必ず、1年以内に白金バッジの夢の配達人に俺はなる。
夢の配達人として、ようやく大きな一歩を踏み出した俺。無事にやり遂げられるか不安が全くない訳ではない。
が、それ以上に胸を弾ませている自分がいた。
「ツバサ君がご希望でしたら、この後隠れ家に寄りません?
私の口から直接的な事は言えませんが、上位10名のここ最近の仕事データをまとめた記録がありますわ。隠れ家外には持ち出せないデータなので、来て頂く必要があるのですが……」
「!……行きます!よろしくお願いします!」
「ふふっ、決まりですわね!では、一緒に帰りましょう」
「はいっ」
やる気が溢れて若干食い気味に返事をした俺の様子を見て、くすくすと微笑うノゾミさん。そんな彼女を見ると、天然でのほほんとした性格に思うが、仕事となると早くて的確だから本当に頼りになる存在だ。
1日も早くまずは一つ目の金バッジを目指して動き出したい俺は、ノゾミさんと共に部屋を後にしようとした。その時……。
「ーーおっ、と」
「!っ、……ご、ごめんなさいっ」
先に扉の外に出たシュウさんの声と、謝る女性の声。その女性の声に、俺の胸はドキンッと跳ねる。