片翼を君にあげる①
「……じゃあ、どうすれば良かったんだよ?」
「!……あん?」
俺の呟きに、三人が反応した。
それを見て、思わず自分の口から言葉が出てしまっていた事に気付いて"しまった"と思った。
じゃあ、どうすれば良かった?
今までずっと胸に秘めてきた想い。
父さんは俺が生まれた時にはすでに夢の配達人は引退していて、母さんの祖父の会社を引き継いでいた。
「昔お母さんには寂しい思いをたくさんさせたから、これからは普通に側に居たい」って。
兄貴に会社を任せられるようになったら、母さんと二人でゆっくり平穏に暮らしたいなって、言ってたんだ。
普通に、平穏に。
そう望んでいた父さん。
あの時、俺が夢の配達人を辞める理由を父さんの死にしていたら……どうなっていたと思う?
悪い記者や、噂好きの人間達の格好の餌食になっていただろう。
批判を受けるのは、俺一人で十分だ。
これ以上母さんが傷付かないように、泣かないように、耐えて堪えて、時が経って大人になれば……。みんなが俺の事を忘れるくらい、早く刻なんて過ぎ去ってしまえばいい、ってずっと思ってた。
そう思って、色んな事を秘めてきたのに……。
ーーしかし、後悔しても遅い。
出てしまった言葉を取り消す事は出来ず、三人の中のリーダーらしき男子生徒が俺の胸倉を掴んで引き寄せる。そして……。
「文句あんなら言ってみろよーー」
そう口にしながら、拳を振り上げるのが見えた。
これはもう、騒ぎを大きくしない為にも一発もらおう。
仕方ない、と自らの失言を認めると、覚悟を決めて歯を食いしばった。……が、その直後。