片翼を君にあげる①

けれど、この場をどうしたらいいのか分からずじっとしていると、にっこり微笑ったノゾミさんが俺を引っ張る。

「さ、ではツバサ君。帰りましょうか?」

「!……え、っ?」

「今後の打ち合わせ!するんですわよね?」

「あ、ああ……っ、と」

ノゾミさんの言葉に、俺は迷った。

久々にレノアと会えた。今日を逃せば、今後下克上の日程詰めになる俺がレノアと会える確率はグッと減るだろう。
正直、もう少し彼女と一緒に居たい。 
しかし。ここは早く仕事に戻って、1日でも早くレノアを迎えに来られるように動いた方がいいのだろうか??

二択を迫られて悩む俺。
すると、ハァ……ッ、っと「やれやれ」と言う感じに溜め息を吐いた最高責任者(マスター)が歩きながら口を開く。

「ノゾミ、ツバサを揶揄(からか)うのはお止めなさい。
ツバサ、女性に対する接し方、交わし方が(すこぶ)る下手です。そんなんじゃ、この先苦労しますよ?もっと勉強しなさい」

「!っ、え……?!」

まさかの最高責任者(マスター)からのダメ出しに、ガーン!とショックを受けた。
そんな俺を尻目にノゾミさんはくすくす笑いながら「はぁ〜い!」と返事をすると、するりと離れて最高責任者(マスター)の方へ歩いて行く。

「ではでは。ツバサ君、先程の件はいつでも大丈夫ですので、どうぞレノアちゃんとごゆっくり〜!」

そして、ヒラヒラと手を振りながら彼女は最高責任者(マスター)と一緒に俺達の前から去って行った。


一気に静かになる廊下。
まさか最高責任者(マスター)に女性の扱い方まで指摘されると思っていなかった。
でもまあ、確かに、以前は子供だった俺も今や18歳。もうこの世界では親の許可なく結婚も出来る年齢だし、今後仕事で色んな場に行けば、当然女性を相手にしなくてはいけない任務もあるかも知れない訳で……。
そう言った対処や仕方について全く無知だし考えていなかったから、もう少し勉強しなくてはと思った。
すると、考え込んでいる俺を見たレノアが、控え目に口を開く。
< 190 / 215 >

この作品をシェア

pagetop