片翼を君にあげる①
「ちょっと!うちの叔父さんに何してるのかしら?!」
黒いショートカットの女子生徒が間に割り込んできて、俺の胸倉を掴んでいるリーダーの腕をギリッと掴んだ。
更に……。
「はいは〜い、そこまで!
みんな、さっさと昼食食べないとお昼休み終わっちゃうよ?」
女子生徒とそっくりな顔をした黒髪の男子生徒が現れ、リーダーの振り上げていた拳を止めた。
突然の乱入と、どう見ても歳が変わらない女子生徒の言った"うちの叔父さん"という言葉が意味不明らしく、三人組は唖然。
「ラン、ライ……」
「ツバサ、何やってんのよ!大丈夫だった?」
「食堂の前で待ってたんだけど、遅いから迎えに来たよ〜」
俺が名前を呼ぶと二人はリーダーから手を離し、胸倉を掴まれた事で少し乱れた服装を直してくれる。
この二人は双子の姉弟で、女の方が姉のラン、男の方が弟のライ。
一緒にこの港街で育った幼馴染であり、さっきランが言った通り俺の姪っ子と甥っ子だ。
俺の父さんと母さんは15歳も歳が離れていて、母さんと出逢う前に父さんには別に好きな女性がいた。つまり、その女性と父さんの間に生まれたのが二人の母親であり俺の異母兄弟の姉。
複雑でややこしいが、正真正銘ランとライにとって俺は同じ歳だけど叔父さんなのだ。
夢の配達人を辞めてどうしようか迷っていた時に一緒に学校に通うよう促してくれたのも、俺が孤立しないように気にかけてくれたのも、この二人。
大事な友達であり、親戚。