片翼を君にあげる①
恥ずかしさや動揺はもうない。
しっかりと私は、自分の好きな人を見つめる。
ツバサは視線を戻すと銃を構えて、ブレスレットの景品札を狙う。
ブレスレットは結構高価な商品の部類みたいで距離もあるし、的もすごく小さい。おまけに、店主さんが言ったように眼帯をしていて片目で狙うツバサにはかなり不利な状況だろう。
……けど。
色んな事を乗り越えて、更にこれから分厚く高い壁を乗り越えて行こうとしている彼からしたら、どうって事ない。
後からポケ電に撮らなかった事を、めちゃくちゃ後悔したよ。
引金を引く瞬間の真剣な横顔と瞳は、美しいとか、綺麗って言葉じゃ足りないくらい眩しくて……。
私の為に必死になってくれて、本当に嬉しかった。
……
…………。
「ーーほい。
少し早いけど、誕生日プレゼント」
「へへっ、ありがとう!」
宣言通り見事一発でゲットしたツバサは、私の手にブレスレットをそっと渡してくれる。
台の上に飾られていた時以上に輝いて見える理由は、言葉にするまでもない。きっと、この先どんな高価なアクセサリーを貰おうとも、このブレスレットに勝るものは現れないだろう。
「……可愛い〜」
「そういやランがそういうの着けてるの見るのって、子どもの時以来かもな」
早速腕に着けて眺めながら歩く私に、ツバサが言った。嬉しくて胸はずっと弾んでいるけど、さっきのような恥ずかしさはすっかりなくなった私は普段の調子に戻り平然と返す。
「残念ながら、こういうのが似合う女の子じゃありませんからね〜。
レノアやノゾミみたいに可愛く女の子らしく産まれてたら、私だってもっとオシャレしたよ〜!」
いつもみたいに、おちゃらけた口調で言った。
笑って返してくれると思った。「そうだな」って、「違いない」って、笑ってほしかった。
……けど。
ツバサは、優しすぎて残酷だ。
「そんな事ねぇよ。毎年着てた浴衣、似合ってた」
「……。え?」
「俺今年もてっきりランは浴衣姿だと思っててさ、だから見付けるのに少し時間がかかって……」
ーーー毎年着てた浴衣、似合ってたーーー
そんな事言ってもらえるなんて思ってなかった私は、不意を突かれて思わず歩みが止まってしまう。茫然としたまま背中を見つめていると、すぐに気付いたツバサが振り返った。