片翼を君にあげる①
「?……ラン?」
「……私、浴衣……似合ってた?」
「え?」
「私の浴衣姿、ツバサの印象に……残ってるの?」
きっとツバサは、何故私がそんな事を尋ねるのか意味不明だったに違いない。
私だって、何でこんな事を口走ってしまったのか分からない。
でも、どうしても聞きたくて。
答えてほしくて、返事を待った。すると……。
「覚えてるよ、ずっと」
「っ、……」
「最初の記憶は、黄色。少し成長して赤。そん次は水色で……去年は、その石と同じ桃色」
子供の頃から今までに私が着ていた浴衣の色を全て挙げた彼。そして最後に、ブレスレットを指差しながら私がずっと隠してきた秘密を言うの。
「お前の1番好きな色、だろ?」
そう言われた瞬間。
私のツバサへの想いは、きっと最高潮に達した。
胸が震えて、全身に血が巡るように熱いのに、手や足は冷たくて感覚がなくなっていくようだ。
叔父さん、姪っ子、血の繋がり……。そんな常識なんて一瞬どうでも良くなって、レノアへの罪悪感も忘れて、私はただただツバサの事しか見えなくなった。
ツバサ、私……貴方の事が好きーー。
そう喉まで出かかった私の本音。
……
…………けれど、パアァーーーンッ……!!と言う大きな音と共に夜空に輝く大輪が、それを遮る。
花火が始まった。
するとツバサはもう目の前の私ではなく、遠くで輝く美しい花を見上げている。
遠く、遠く……。ずっと先にある輝きを見つめるその瞳はすごく優しくて、"ああ、恋してるんだな"って、愛おしい人を想っているのが一目瞭然。
そして私は、その相手が誰なのか知っている。
だからこう言った。
「……来年は、レノアと一緒に見られるといいね」
以前のツバサなら私のこの言葉に「無理だろ」とか、「何言ってんだ」とか、諦めて否定的な返事をしていただろう。
でも、今は違う。
「ああ。そうだな!」
少し照れたような、でも嬉しそうな素直な笑顔で彼は答える。
そんな表情で、微笑えるようになったんだねーー。
傷口に傷薬を直接掛けられたみたいな、じゅんっとした痛みが心の奥まで浸透する。
分かっていた筈なのに完敗を改めて実感して、この気持ちの引き際が頭を過った。
けど、続くツバサの言葉がその想いを変える。