片翼を君にあげる①


父さんは味付けがしっかりした物や甘い物が大好きで、おまけにその食べる量がハンパない。
昔家族で行った温泉旅行で、父さんが夕飯後に温泉まんじゅうを1人で一箱(50個入り)を食ってるのを見た時はマジで引いた。
それに引き替え、俺はどちらかと言うと素材の味をそのままにした味付けの薄い料理が好みで、甘い物は苦手。そして食べる量も同年代の人と比べても少ないと思う程だ。

でも、俺はそれを母さんには言えない。
俺が父さんに似ていれば似ている程喜ぶ姿を見ると、どんどん言えなくなる。


「あ!そういえば、ツバサもうすぐ誕生日じゃん!
誕生日プレゼントは何がいい?」

「駅前に新しく出来たケーキバイキングのお店でお祝いしよ〜!私それ奢ってあげる!」

「ラン、お前さっきの俺の話聞いてたか?」

「いいじゃん!可愛い姪っ子が奢ってあげるんだよ?」

「姪っ子なら叔父さんの好みをちゃんと把握してくれよ」

「お!上手い返し!ツバサの勝ち〜!」

ギャアギャアとうるさいけど、ランとライといる時間は"いつかその嘘が母さんにバレるんじゃないか?"って怯えている俺を忘れさせてくれた。
そして、俺が俺なんだって、自分の存在を確かめさせてくれる。
そういう意味でも、二人は俺にとって大切な存在だった。


でも来年、ランとライはこの学校にはいない。
二人は両親と同じ職業である、夢の配達人のサポートをする調査員になるらしい。
それは幼い頃からずっと言っていた、二人の夢。

俺は見付けられるのだろうか?
来年もまた変わらず学校に通って、勉強して……。その中で自分の一生を賭けたいと思える程のやりたい事に、出会う事が出来るのだろうか?

……
…………。
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