片翼を君にあげる①
(2)ツバサside
俺の長い1日が、ようやく終わろうとしていた。
お風呂に入り汗と疲れを落とすと、スウェットを着た俺は自室である奥の部屋に向かう。
ようやく1人でゆっくり出来る、そう思った。
「よっ!ツバサ、待ってたぞ!」
が、扉を開けた瞬間。
そう言って笑顔で右手を上げるパジャマ姿の兄ヒカルを見付けて、俺は扉を閉めたくなった。
よく見ると、ベッドの傍に布団が敷かれている。
そういや俺より先に風呂に入ってて、泊まっていくんだろうな〜とは思っていた。
兄は俺より六つ上の今年24歳。母さんと同じ部屋に寝るのは確かにどうかとも思うが、正直もう良い年の男2人が同じ部屋で眠るのもどうかと思う。
「ここで寝るつもりかよ!」
「いいじゃん?たまにはお兄ちゃんに話したい事とかあるだろ〜?」
「……ないね。俺は疲れたからもう寝たい」
「!っ……ツバサ君、冷たい!せっかく可愛い弟の誕生日が近いから、忙しい中帰ってきたのに!」
「嘘つけ!どう見ても出張のついでだろうが〜!」
そんな風に軽く言い合いをして俺が部屋の片隅に置いてあるキャリーバッグを指差すと、兄はバレたか〜という感じにあはは、っと笑って、でもすぐに真面目な表情をして言った。
「まあ、確かに出張ついでだけどさ。お前に会いたかったのも本当だよ。
少し、付き合わないか?」
ズルい表情と言葉で、俺が断らない事を知っている。まだ封を開けていない缶のお酒を差し出しながら誘ってくるんだ。
あ、ちなみに俺達の国では16歳から飲酒がOKなんだ。夢の配達人などを含めて、この年になると働く人達が多いからって事がおそらく飲酒制限が軽い理由。
別世界に住むみんなは、その国の年齢制限をしっかり守ってくれよな。