片翼を君にあげる①
そして、ツバサが4歳になった時。
夜中、誰かが話している声がして目を覚ますと……。
『うん。……うん』
一緒に子供部屋で寝ていた筈のツバサがベッドから降りて、まるで誰かの話を聞いているように頷いていた。
その気配には同じ部屋で寝ていたヒカルも気付いて、暫く二人で様子を伺っていると……。
『ん、わかった。ばいば〜い』
ツバサがそう言って、誰かに手を振っていたのだ。
さすがに驚いて、電気を付けて「誰と話してたの?」って問い掛けると……。
『ひいじいちゃんだよ』
と言って、ツバサは両親が眠る寝室へ駆け出した。
"まさか!"って思った。
ヒカルと二人で私達も両親の元へ駆けつけると、ツバサが母に向かってこう言っていた。
『あのね、ひいじいちゃんもうばいばいだって。
みんな、げんきでねっていってたよ』
……その直後だった。
ずっと床に伏せっていた私達のひい祖父さんにあたるアルバート様が亡くなったと、電話が掛かってきたのは……。
私達の父ヴァロンの一族には、希血と呼ばれる特殊な血液型で産まれてくる子供がいるらしい。
その希血の者は不思議な能力を持っている可能性があって、ツバサはその血を受け継いでいた。
父もその不思議な能力を持っていた。
が、父の能力は相手と触れ合った時にのみ発動するものだったから、本人が慣れ、気を付けていればさほど影響をもたらさなかったとか。
でも。ツバサが持っていた能力は父よりも強力で、幼くして目覚めてしまったせいで本人は上手く抑える事が出来ずにいた。