片翼を君にあげる①
聞けば、レノアの母親が結婚する相手はこの国では1、2を争う程の財閥の主人。
元々俺達の中でもズバ抜けて身分が高かった彼女は、俺の父親とレノアの母親との友人関係という繋がりがあったから遊び相手でいられただけで……。本来ならば、知り合う事すらなかったかも知れない相手。
そんなレノアの身分が更に高くなり、これから少女から大人になっていく事を踏まえて、彼女の母親は"今日が最後"と告げていたのだ。
「私……嫌だ!」
「レノア……」
「みんなと、もうっ……遊べないなんてッ。
ツバサと会えなくなるなんてッ……嫌っ!」
そう訴えながら顔を上げたレノアを見て、ドキッとした。
だって、その泣き顔は今まで自分が見てきた彼女とは全く違って……。上手く言えないけど、"友達"に見せる表情とは違うように感じた。
不意を突かれて、レノアに飛び付かれた俺は支えきれなくて尻餅を着く。
背丈も体格も小さい俺は、まだ覆い被さるように泣き付く彼女を抱えきれなくて……。でもいつか、今は自分の身体が倒れないように支えているこの両手を地から離して、抱き締めてやれると思っていたんだ。
そして、レノアの直向きな想いにも、応えてやれるって……思ってた。