片翼を君にあげる①
レノアーノ様が15歳になった時。ツバサ様が夢の配達人としてデビューする事が決まったとお聞きして、私はご一緒に手を取り合って喜んだ。
夢の配達人になってもツバサ様からの贈り物は相変わらずお菓子で、手紙もこんな任務に行ってきた、とか一言だけ。
さすがに年頃の女性にもっと何かないものか?と思ったが……。それでも毎回毎回、まるでツバサ様が近くに居るかのようにとても幸せそうにそれを見ているレノアーノ様を見ると、私にはお二人にしか分からない想いの形があるのだと感じた。
……それなのに。それは、突然やってきた。
ツバサ様が夢の配達人を引退ーー。
レノアーノ様とご一緒に毎週読んでいた夢の配達人の情報誌で、私達はそれを知った。
何故?と、ただただ疑問しか浮かばなかった。
ツバサ様は過去の夢の配達人を凌ぐ実力と勢いであっという間に金バッジまで昇り詰め、史上最年少で白金バッジになると騒がれていた。
そう騒がれていたのが、つい先週の情報誌で……。
全てが順調の筈だった。
レノアーノ様の夢と幸せは、もうすぐ訪れる筈だった。
「っ……きっと、何か事情があるのよ!私っ、ツバサに手紙を書く!!」
本当はすぐに彼の元に駆け付けたかったに違いない。
けれどこの時期、ちょうど留学されていたレノアーノ様とツバサ様が住む場所はあまりに遠く、その上留学期間中は身内の不幸でもないかぎり帰国する事は許されない決まり。
血の繋がりはないとはいえアッシュトゥーナ家のご令嬢として、レノアーノ様はそれを破る事は出来なかった。
代わりに、レノアーノ様は何通も何十通も何百通も手紙を書いた。
何かの間違いではないか?と思い、情報誌も以前と変わらず毎週読んだ。
しかし、書かれているのはツバサ様が下克上当日にその場に来なかった事や決まっていた仕事をドタキャンし、理由も告げずに辞めると決めた事への批判や中傷。
……そして、そのまま一年が過ぎた。