片翼を君にあげる①
実は、私も一時期夢の配達人の職に就いていた。
ヴァロン様に引き取って頂く少し前、私は夢の配達人の現最高責任者であるシュウ様の元へ身を置かせて頂いており、その息子であるミライ様と共に切磋琢磨し、そのまま一緒に夢の配達人になったのだ。
しかし、金バッジまで昇り詰めたものの、やはり私はヴァロン様のお側でお役に立ちたいと思い引退。秘書兼秘書として生きる事を決めた。
その事に後悔はなければ、夢の配達人に未練はなかった。けど……。
『シオン、ツバサに色々教えてやってくれるか?』
ヴァロン様よりそう命を受け、現役時代の経験を活かしてツバサ様の家庭教師をしていた時間は本当に楽しかった。
それだけに、飲み込みが早くすぐに金バッジ止まりの私では教えられる事が限られてしまい、白金バッジのミライ様にツバサ様の師匠をお任せしなくてはならなくなった時は、正直悔しかったのを覚えている。
けれど、アカリ様のお話やヴァロン様への憧れから始まったツバサ様の夢は、あるお方への想いから更に急速して行った。
『絶対に白金バッジの夢の配達人になって、レノアに会いに行くんだ!』
一途で曇りのないそのお姿を見たら、私の悔しい気持ちなどあっという間にかき消されてしまい、ただただ応援したくなった。
どうか、ツバサ様とレノアーノ様に幸せな未来を……。
そう、願っていた。
……
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