片翼を君にあげる①
「ツーバーサ君!お誕生日、おめでとう〜!!」
「約束通り、ケーキバイキング行こ〜♪」
7月7日の朝が来た。
今日は俺の18歳の誕生日。
無視しようと思ったが呼び鈴を何十回と押されてしぶしぶ玄関の扉を開けると、同時にクラッカーを鳴らされて、そこにはいつも通り楽しそうなランとライが立っていた。
「……約束した覚えはない。おまけにケーキバイキングかよ」
「て!ツバサ、まだパジャマじゃん!信じられない、早く着替えてきてよ〜!」
「そうそう!新しいお店だから開店時間と同時に行かないと、入店出来るの遅くなっちゃうよ〜?!」
「人の話は無視か、このやろう……」
レノアの前夜祭に出席して、ゆっくりと夜行電車に乗って帰って来て、風呂に入ってベッドに入って……。
でも、寝ようとしても寝られなくて、時間だけが過ぎて、今に至る。
正直、一人で居るとモヤモヤした考えしか浮かばないから二人が来てくれて嬉しくないと言ったら嘘になる。けど……。
「……悪いけど、パス」
「え〜っ!?なんでよ〜!!」
「あ、もしかしてアカリさん居たりする?」
「いや、母さんはパートで夕方まで帰らない。……ただの金欠」
この二人には隠す必要も格好つける必要もないと思い、俺は理由を正直に言った。
暗黙の了解で、二人は母さんが家に居る時間帯は俺を外に連れ出したりは極力しようとしないし、俺が断るのを知っている。
でも、「今日は休日でパート先のパン屋さんが忙しいから、どうしても休めなかった」って母さんは出掛けているからそこは問題ない。問題は、情けないけど金欠。
夢の配達人だった頃の稼ぎの貯金は諸事情でとっくにないし、バイトも辞めた。
月のお小遣いを節約して、繰り越していたお金はレノアの誕生日プレゼントに消えたし……。俺は現在まさに一文無しだったのだ。