片翼を君にあげる①
「っ……、やっぱり。ライも女の子と、付き合いたいって思うか?」
「!……へ?」
「つ、付き合って……その、……っ。い、……色々、したい……とか」
が、全く上手く言えなかった。
しかも言葉を紡ぐ毎に恥ずかしさで赤くなっていく顔を隠すように俯くと、同時に声も小さくなってしまいライにちゃんと聞こえたかも分からない。
ああー!俺の馬鹿ッ!!
これじゃ、変な意味で聞いてるみたいじゃん!!
俺はこの手の話題の中に入るのも、話す事にも慣れていなかった。
せっかくライが話題を振ってくれたのだから、そこに乗っかるように軽く聞けば良かったのに……。変に恥ずかしがって口籠ってしまったせいで気不味い。
やっぱり止めれば良かった、と後悔したが、ライは俺が思っているほど気にしていない様子。質問内容もちゃんと聞こえていたようで、明るい声ですぐにあっけらかんと返答してきた。
「え〜?そんなの、当たり前じゃない?」
「!……、っ……当たり、前?」
「好きならさ、したいじゃん!色々!
イチャイチャして、キスして〜……。触れたいって思うの、当たり前でしょ?」
「っ、……」
俺が何故この質問をしたのか、その意味を勘違いしたライが"そう思うのは男として当たり前だから、気にすんなよ"的な感じで笑う。
その返答に、俺の胸はまたズクンッて重く痛んだ。
ーー違うんだ。違うんだよ、ライ。
俺には、同世代の男が異性に抱くような感情がない。
そんな風に思った事が……ないんだ。
昨夜、レノアと久々に会う事が出来た俺の中には一つの疑問が生まれた。
俺は、レノアの事を本当に好きなのか?……って。
会えて嬉しかった。
忘れられる事を、彼女が別の男と結婚する事を嫌だと思った。
……けど。俺は、レノアに触れたいと思った事がなかったのだ。
だから、分からなくなった。
本や舞台で見る想い合っている男女なら、きっと昨夜のような状況で「一緒に逃げよう」って手を取り合って逃げて、抱き合って、キスして……互いを求め合うのだろう。
それなのに、俺はただ拗ねて、駄々を捏ねた子どもみたいにレノアに接して……。まるで嫁に行ってしまう姉を取られたくない弟みたいな事しか、出来なかった。